「バステト女神」のマライア
トロイは自分の体に感じる異変に気付いた。
「…チッ、無理矢理取られたか…。」
「ん?トロイ、なんか言ったか?」
「いーや、何も?」
トロイはおどけてみせる。さて、いつ主人の館に戻ろうか。自分のスタンド“無神経”が外されてしまった以上、花京院春乃妹に自由に動き回られては困る。
「(…困ったな。リリスからの連絡は…まだ、か…、)」
「ところで、じじいはどこへ行った?」
「トイレだ…。イギーといっしょだから、異常があれば気づくだろう。」
「トイレ?」
「おまえもいくか?」
「……まともなしくみならな。」
「残念ながら、この地域の外のトイレは期待できるものじゃあないよ、ポルナレフ。」
「知ってるのか!?トロイ、」
「ああ、おれもエジプト出身だからな。一応。」
承太郎はトロイを睨むように見つめる。それに気付いたトロイは、挑発的な態度で肩をすくめてみせた。
「でも名前はエジプトっぽくねーな!」
「名付け親がイギリス人だったからな。」
「へー。」
その時、トロイの足元に一匹のサソリが近付いてきた。それに気付いたポルナレフが大声を上げる。
「トロイッ!足元にサソリがいやがるぜッ!殺せ殺せッ!」
「ポルナレフ、物騒な奴だな!簡単に殺生していいもんじゃあないだぜ?俺、逃がしてくる。」
そう言って、トロイはサソリを自分の服の端にサソリを登らせると、岩陰に消えていった。
「遅かったじゃん、リリス。」
トロイはサソリを手に乗せると、小声で話しかけた。サソリは鋏をカチカチとならす。
「ああ…、なるほど、あの女が、ね…。俺のスタンド、“無神経”もあの女に外されたよ…。…俺もそろそろそっちに戻ろりたいな…。」
トロイは溜め息をつく。
「俺たちは今、ナイル川を下ってきたんだ。この辺は交通の便が少しだけどいい方だから、ニ、三日もあれば館につく。」
「おーい、トロイ!いくぞーッ!」
「!ああ、今行くよ!」
トロイはサソリを自分の袖の中に隠して、ポルナレフの元へ向かった。
「遅かったな、トロイ。」
「サソリがなかなか服から離れなくてね。」
トロイは困ったようにそう言った。
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