眠り姫

春乃妹は女の話を聞いて、また涙を流した。女は小さく笑い、春乃妹の頭を撫でる。

「彼女は今、幸せなの。愛する男と共に生きることが出来て。愛する男との子供もできた…。」
『…子供…?』
「そう…。今、4カ月だったかしら…。」

女が自分のお腹を撫でた。春乃妹はそこで気付く。

『…あなたが…、』
「そう。マリア・ブランドー…。」

マリアは悲しそうに笑った。

「私は吸血鬼になってしまった。けれど、人間の血を飲むのは嫌いなの。…だって、一昔自分も人間だったのよ?だから、安心して。あなたを襲ったりはしないわ。」

春乃妹は頷いた。マリアは再び春乃妹を連れてピアノのある部屋にいく。

「…春乃妹さんには、愛する人はいる?」

春乃妹の頭に、花京院と承太郎が浮かんだ。なるほど、と思った。マリアが、自分と似ているといった理由がわかった。春乃妹もまた、兄である花京院を愛し、大切に思っている。そして、一人の男として、承太郎を愛している。どちらも大切だ。

『…はい。』

春乃妹の目は強い意志で輝いていた。マリアは春乃妹の頭を撫でると、意を決したように真剣な面持ちで口を開いた。

「私は、あなたを逃がします。でも、今はまだその時じゃない。春乃妹さんのお仲間がDIOを倒しに来た時、私があなたを安全に彼らの元へ届けてあげる。」
『…マリアさんは…?』
「私なら大丈夫。…いいこと、春乃妹さん。私があなたを護ります。だから私の傍を離れてはだめよ。私がいない時は、必ず私の部屋から出てはだめ。…窮屈な思いをさせてしまうけれど、あなたにとってこの屋敷は敵が多すぎる。」
『…はい。』

春乃妹は力強く頷いた。

「いい子ね、春乃妹さん。大丈夫…。あなたを必ず愛する人の元へ届けます。…必ず。」





「…チッ、あの女…、やっぱりDIO様を裏切る気ね…。」

それを聞いていたリリスに、二人は気付きはしなかった。

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