「アヌビス神」

承太郎は病院に着くと、車で追い付いたジョセフ等と合流。すぐさま花京院とアヴドゥルのいる病室へ向かった。春乃妹がいることを願いながら。しかし、承太郎の願いはすぐに打ち砕かれてしまう。

「承太郎、そんなに血相を変えてどうしたのだ。」

花京院が眠るベッドの前で椅子に座っていたアヴドゥルは、早足で病室に入ってきた承太郎に声を掛けた。花京院はその足音で起きたのか、瞼に走る痛みに小さく呻きながら、身体を起こした。

「「春乃妹は、」」

花京院と承太郎の声が重なる。

「…来てないのか?」
「わたしは見ていないが…、」
「春乃妹はいないのかい…?」
「…ああ、先に病院に戻ってきているのかと思って、おれも戻ってきたが…、」
「…そんな…、」

バカな…、と言った花京院。

「承太郎、おいて行くなよ!」

ポルナレフが声を張り上げながら病室へ入ってきた。

「これポルナレフ、ここは病院じゃ!そんな大声を出すな!」
「あと普通ノックするでしょ、病室入る時。」

ジョセフとトロイがそれに続いて病室に入る。花京院は少しとり乱したように声を荒げた。

「ジョースターさん!春乃妹がいないってどういう事ですか!?」
「落ちつけ、花京院!」
「落ち付いていられるか!春乃妹は…、春乃妹は僕の妹なんですよ…?」
「…花京院、」
「そーいえば、さっき、」

口を開いたトロイに、皆の視線が集中する。

「春乃妹ちゃんらしき女の子が、知らない女に肩借りてどっか行ってるの見たよーな、見てないよー…」

な、と続ける前に、承太郎はトロイの胸ぐらを掴んで壁に押し付けた。

「止めんか承太郎!」
「てめー…、はなっから信じちゃいなかったが、やっぱり怪しいぜ。吐きな。」
「…怖いな〜ァ。」

トロイは悪びれる様子もなく続ける。

「人の話は最後まで聞いてほしいんだけど。春乃妹ちゃんらしき女の子って言ったんだよ、俺。春乃妹ちゃんだと確定したわけじゃあないでしょう?」

承太郎は掴んでいたトロイの胸ぐらを放した。トロイは溜め息を吐くと、胸ぐらを整える。

「で、どうするの?春乃妹ちゃんを探す?それともDIOの館を目指す?」
「春乃妹が先に決まってる!」
「花京院!」
「…ぁ…、すみません…。」

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