DIOの呪縛の巻

花京院の額にうち込まれた肉の芽。ジョセフによると、肉の芽とはある気持ちを呼び起こすコントローラー。DIOはこれを花京院にうち込む事で、ヒトラーに従う兵隊のような、はたまた邪教の教祖に憧れる信者のような忠誠心を呼び起こされるというものだった。

「DIOはカリスマによって支配して、この花京院という少年に我々を殺害するよう命令したのだ。」
「…こいつは、」

承太郎は、春乃妹を顎で指した。春乃妹は、花京院が助からないと聞き、ショックからぽろぽろと泣いていた。

「…ふむ。春乃妹ちゃん…、君はDIOに何もされんかったか?」
『…ぅ…、ひっぅ…、』
「…おい、いい加減泣き止まねーか!うっとおしいぞォ!」
『ひっ!』
「これこれ、承太郎!レディに向かってそんな口を利くんじゃあない!」
『…ごめんなさい…。』
「すぐに謝るのもうっとおしいぜ。」
『…っ…はい…。』
「…やれやれじゃ…。」
「…で、この肉の芽だが、手術で摘出できねーのか?」
「この肉の芽は死なない。脳はデリケートだ。取り出すときこいつが動いたら、キズをつけてしまう。」
「JOJO…、こんなことがあった。」

アヴドゥルが話し始める。それは今から四カ月ほど前だ。エジプトの首都、カイロで、彼はDIOに出会った。占い師であるアヴドゥルの店の、に階へ続く階段に立っていた、と。その雰囲気に、一目で目の前の男がDIOだと分かったアヴドゥルは、すぐさまその場を逃げたという。

「…でもなければ、私もこの少年のように、「肉の芽」で仲間に引き込まれていただろう。「スタンド」を奴のために使わせられていたろう。春乃妹さんが言う、DIOが怖い、という気持ちは、痛いほど分かる。」
「そして、この少年のように、数年で脳を食いつくされ死んでいたろうな。」
「死んでいた?ちょいと待ちな、この花京院はまだ、死んじゃいねーぜ!!」

承太郎はスタープラチナを出すと、自らの両手で花京院の顔挟むように押さえた。

「俺のスタンドでひっこぬいてやるッ!」
「承太郎ッ!」
「じじい!おれに!さわるなよ。コイツの脳に傷を付けず、ひっこ抜くからな…。おれのスタンドは、一瞬のうちに弾丸を掴むほど正確な動きをする。」
「やめろッ!その肉の芽は生きているのだ!!なぜやつの肉の芽の一部が、額の外へ出ているのかわからんのか!すぐれた外科医にも摘出できないわけが、そこにある!」

肉の芽を引きぬこうとする承太郎の手に、一本の触手が飛びかかった。春乃妹はその気味悪い光景に顔をそらし、目を瞑った。それと同時に、花京院の瞳が開く。

「き…、さ…ま、」
「動くなよ、花京院。しくじればテメーの脳はお陀仏だ。」

承太郎は、肉の芽の触手が自分の腕の中を這って、顔にまで這い上がってきたにも関わらず、その行動は冷静沈着。震え一つ起こしていなかった。機械以上に正確に、さらには力強く動くスタープラチナは、花京院の額から綺麗に肉の芽を抜き去った。そして、承太郎の中を這っていた触手を引っ張り出し、引き千切った。

「波紋疾走!!」

ジョセフの波紋疾走により、肉の芽は灰と化した。ゆっくりと起き上がった花京院。

『お兄ちゃんっ!!』
「春乃妹…!な?」

春乃妹は花京院に飛びついた。それを馴れたように受け止めた花京院は、じっと承太郎を見る。

「なぜ、お前は自分の命の危険を冒してまで、私を助けた…?」
「さあな…、そこんとこだが、俺にもようわからん。」

花京院兄妹の目に、涙が浮かんだ。

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