「クヌム神」のオインゴと「トト神」のボインゴ

「いつまで寝てんだい、このクソガキがッ!」

ベシン、と頬に走った痛みで春乃妹は目を覚ました。目を開けると真っ暗なそこ。正面から女の声が聞こえる。

「まったく、あのお方ったら…こんな娘の何処が気に入ったのかしら…。」
『…ッ!?』

顎を掴まれて上を向かされた。春乃妹は目を凝らしたが、女の顔を見る事が出来ない。瞬きを繰り返すが、視界は相変わらず真っ暗なままだ。

「ハンッ、アタイの顔を見ようとしたって無駄だよ、なんてったって「何をやっている、リリス。」…!」

リリスと呼ばれた女の声を遮った男。春乃妹は胸騒ぎを思えた。…聞き覚えのある声だ…。

「…DIO、様…、」
『!』
「何をやっている、と聞いている。」
「…きゃ、客人をもてなしておりましたわ、」
「…そうか。…部屋へ連れて行け。」
「…はい、」

春乃妹の心臓はこれまでにないほど脈打っていた。それと共に、視界がいつまでも暗黒なのと、いつの間にDIOの元に来たのか分からず、頭の中がパニックになっていた。

「ほら、立ちなッ!」
『ぁっ、』

リリスに腕をグイグイ引かれ、半ば引きずられる形で歩きだした春乃妹。平衡感覚が鈍り、どこを歩いているのか分からない恐怖に、春乃妹の歩みは進まない。

「…チッ、」

リリスは舌打ちをした。




「ほら、入んな。」

リリスに背中を押し飛ばされ、春乃妹はふかふかのベッドと思われる所に突っ込んだ。ギィ…、とドアがしまる音が聞こえる。それから、リリスが部屋から遠ざかる足音だけが聞こえた。春乃妹はゆっくりと手探りで身体を起こした。

『…DIO…って、あの、DIO…?』
「このDIO以外に誰がいる?」
『!?』

背後から聞こえた声に、春乃妹の肩が跳ねる。カツコツと靴音が近付いてきた。

「…久し振りじゃあないか、花京院春乃妹。」
『…っ、』
「そんなにおそれることはない、あの時のようにな。」

DIOは春乃妹の髪を一房掴むと、キスを落とした。耳に掛ったDIOの吐息に、春乃妹は身を震わせた。

「楽しもうではないか、…二人で。」

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