「クヌム神」のオインゴと「トト神」のボインゴ
ガクン、と視界が揺れた。
『ぇ…、』
気付けば春乃妹は地面に膝をついていた。
『ぁ…れ…?』
身体に力が入らない。そのままへたりと座り込んだ春乃妹。承太郎達はまだ、春乃妹がついて来ていないことに気付いていないようだ。
「…ちょっとあんた、大丈夫かい?」
背後から若い女の声が聞こえた。春乃妹は振り返ろうとしたが、身体が思うように動かない。
「ねぇ!あんた!」
グイッと肩を掴まれた春乃妹は、その反動で地面に倒れてしまった。
『動け…ない…、なん、で…?』
春乃妹は手を伸ばした。ガクガクと震える手は、承太郎達のいるカフェへと向けられている。
「動けないなら、仕方がない。連れてってやるよ。」
女の声を最後に、春乃妹は意識を失った。
一方、承太郎達四人はカフェに入り、春乃妹が来るのを待っていた。
「春乃妹の奴、いったいどうしたんだ?」
「花京院のことが心配なんじゃろう。少し一人にしてやってもいいんじゃあないか?」
「泣きそうな顔してたし、そっとしておけばいいさ。すぐ追いつくよ。」
「…、」
店主の男が四人から注文を取り、店の奥に行こうとするが、ジョセフは注文した紅茶ではなく、栓を抜いていないコーラを出すように訴えた。店主は驚いた様に聞き返したが、店主はコーラを手に取る。ところが、他の客の、コーラが温いという苦情に、四人は結局紅茶を頼むことにした。
「おっせぇなー、春乃妹のやつ、まだこねーのか?」
「さぁ、もしかしたら、一人で病院に戻ったんじゃないの?お兄ちゃんが心配で…、」
「ひとりでか!?どこで敵に遭遇するかもわからん、急いで探さなくては…、」
「まぁまぁ、ひとまずこの紅茶くらい飲み干さないとさ、マスターに失礼だよ。ね、マスター…?」
「へ…?!へい、そ、そうして頂けると嬉しいぜ、へへ…!」
「ほら、とりあえずこれ飲んでからにしよう。春乃妹ちゃんならそこまで遠くに行ってないはずだからさ。」
トロイはにっこりと笑った。
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涙の壺