「愚者」のイギーと「ゲブ神」のンドゥール

「SPW財団の人間は無関係なのに、襲いおってッ!アヴドゥル、どんなスタンドか見たか!?」
「見えたのは「手」だけでした。しかし、まだ水筒の中にいます!出ていった所は見ていません。」

急いで全員が地面に伏せて周りを窺う中、トロイだけは愉しそうに口角を上げていた。春乃妹はそれを見て背筋に悪寒が走った。しかし、トロイの顔を見ていたのは春乃妹だけだったようだ。

「承太郎!敵の本体を探せッ。」
「今探しているぜ。だが…、」

承太郎は双眼鏡を使って周りを見渡す。しかし、スタープラチナで見ても敵本体の姿は見当たらない。

「ポルナレフ、水筒を攻撃しろ。」
「お…、おれが…?…か…、」

花京院とポルナレフがどちらが水筒を攻撃するか口論していた時だった。花京院の顔の下にじわじわと水が染み出し手の形になると花京院の眼を鋭利な爪で引掻いた。

『ぁ…ッ!』
「かっ!花京院!」
「水だッ!もうすでに水筒からは外へ出ていたんだッ!血といっしょにッ!」
『お兄ちゃん…ッ!』

春乃妹が花京院に駆け寄ろうと立ち上がるが、トロイがその手を掴んで引き止めた。

『ッ!放し「しー…ッ。今は大声出さない方が身のためだよ、春乃妹ちゃん?」…、』
「今の、見てただろう?ポルナレフの奴が大きな声を出したから、あの手が出てきたんだよ。ふふ…、見てごらん、今だって…。」

トロイは不敵に笑いながらポルナレフを指差した。ポルナレフはパニックになって叫んでいる。すると、ポルナレフの手元からまたも水が染み出してきたではないか。

「ほら、奴はきっと、」

トロイが次の言葉を発しようとした時だ。

【ピピピピピピピピピピピ】

SPW財団の一人が付けていた腕時計。そのアラームが鳴り響くと、水の手はそちらに振り返り、時計のついていた腕を掻き斬った。

「い…、いったいなんだ…、パイロットの死体を攻撃したぞ!」
「いやちがう、死体ではない。時計だ…。時計のアラームを攻撃したんだ。」
「音だ。音で探知して攻撃しているんだ!」

ポルナレフが抱えた花京院の傷口から、ぽたぽたと血が垂れていく。手はポルナレフの方へ振り向いた。

「やばい、ポルナレフ、今度こそ襲ってくるぞッ!車まで走れッ!」

ポルナレフは花京院を抱えて走り出した。

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