「愚者」のイギーと「ゲブ神」のンドゥール

それから一行は、新しい仲間一人と一匹加えて車を進めた。運転はジョセフ、助手席に承太郎。一番後ろの荷台にはポルナレフとアヴドゥル、花京院とトロイが荷物と一緒に座っていた。春乃妹だけはなぜかイギーと一緒の座席に座っていた。

「ジョースターさんーッ、なんとかしてくれよッ!なんでこのクソッたれのワン公がシートに座って、おれたちが荷台にいなきゃあならねーんだよッ。せまくって腰がいてーよッ。しかも、春乃妹だけはやけに懐いてやがるッ!」
「うむ…好物のコーヒーガムの味がなくなるまで待つしかないな…。」

ポルナレフがイギーに手を伸ばすと、イギーは牙をむいて唸っていた。しかし、イギーは何故か春乃妹が近くにいても唸ろうとしない。春乃妹は恐る恐る手を伸ばして、その頭を撫でた。

「…フン」
「おい、こいつ今「フン」って言ったぞ…ッ!」
「春乃妹さんの雰囲気に和んでいるのかもしれないな。」
「でもよォ〜!」

そんな中、ジョセフは突然ブレーキを踏んだ。車は勢いにタイヤを取られて弾み、大きな衝撃が一行を襲った。

「み…、見ろッ、あ、あれを!」

ジョセフは急いで車から降りると、目の前を指差した。指された先には先程別れたばかりのSPW財団のヘリが墜落していた。

「兵器による攻撃のあとはない。」
「なんか、そのままドスンと落ちた感じだ、」
「ま…、まさかッ!」
「気をつけろッ、敵スタンドの攻撃の可能性が大きい!」

一行は細心の注意を払いながらヘリに近付く。

「おっと、春乃妹ちゃんは俺とここにいよう。なにかあったら危険だからね?」
『…ぁ、』

トロイは花京院の後について行こうとした春乃妹の腕を掴んで引き寄せた。そしてまたにっこりと笑ったトロイを見て、春乃妹はゾワリと鳥肌が立ったのに気付いた。

一方、承太郎はヘリの近くで死んでいたパイロットに近付く。パイロットの口の中には大量の水。体をひっくり返して水を出すと、小さな魚が流れ出た。

「溺れ死んでいるぜ!この砂漠のど真ん中で…、いったい?」

ポルナレフ、アヴドゥル、花京院はもう一人のパイロットを発見した。幸いにもそのパイロットは生きているようで、しきりに何かを伝えようとしていた。





『あの…、放して…ください。』
「え?いやだ。」
『…どうして…?』
「今行ったら危なそうじゃん?」

そう言ながら、トロイは春乃妹の手をグイグイと引き寄せる。

『放して…!』

春乃妹が力を込めて振り切った瞬間、なにかが千切れる音と衝突音が響いた。

「あーあ…、言わんこっちゃない。ここにいて正解だ。」
『…、』

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