DIOの呪縛の巻

承太郎の後を追い、着いた茶室。そこにいたのは承太郎の祖父、ジョセフ・ジョースターと、その友人のモハメド・アヴドゥル。春乃妹は初対面である二人に身体を強張らせる。

「じじい、帰ったぞ。」
「んお?承太郎!学校に行ったのではなかったのか?」
「…どうやら、DIOの刺客と出くわしたようですね…?」
「何っ!?それは本当か、承太郎!!」
「ああ。コイツだ。」

どさり、花京院を畳の上に降ろした承太郎。

「それと、こいつの妹も幽波紋使いで、DIOの事を知っていた。」
「!?」

そろりそろりと部屋に入った春乃妹に、ぐりんと振り返るジョセフ。それに驚いた春乃妹はすぐ目の前に立っていた承太郎の背に隠れてしまった。

「おお、すまん。驚かせてしまった…!」
「やれやれだぜ…。」
「…で、お嬢さん、名前は何と言うんじゃ?…っと、その前に、わしから名乗っておかなければな。ジョセフ・ジョースター…、承太郎の祖父だ。」
「…モハメド・アヴドゥル。ジョースターさんの友人です。」
「…。」

承太郎の後ろからゆっくりと出てきた春乃妹。小さく頭を下げた。

『花京院…春乃妹…です…。その人は、私の兄の…典明。』
「幽波紋使いというのは、本当ですか?」
『…涙の壺…。それが私の幽波紋。お兄ちゃんのスタンドは、法皇の緑。』
「「……。」」
「DIOについて、知っている事を話せ。」
『DIO様について…?』

春乃妹はDIOについて考える。しかし、先程の花京院と承太郎の戦闘時に思い出した事が頭をよぎり、肩が跳ねる。DIOについて知っている事は一つしか浮かばなかった。

『ぁ…あ…、』

体が震え、息が上がる。異常じゃない反応に、三人は顔を見合わせた。

「おい、大丈夫か?」
『DIO様…、怖い…。』
「…それだけか?」
「もっと、他にないのか?幽波紋能力とか…!」
『知らない…私、ずっと泣いてた…。』

欲しかった情報は掴めず、三人はまた顔を見合わせた。

『お兄ちゃんは…助かるの…?』

ポロリ、春乃妹の右目から一粒の涙が零れる。すかさず現れた涙の壺が拾う。突然の事に承太郎を除く二人も幽波紋を構えた。しかし、承太郎は静かにその様子を窺うだけで、涙の壺も、春乃妹の涙を拾い終えると持っていた壺にそっと蓋をし、慰めるように春乃妹の頬を撫でるのだった。

「その幽波紋は、一体……、」
『私の涙を集めてるの…。』
「涙を…。なるほど、それで涙の壺ですか…。」

泣き止んだ春乃妹に、涙の壺はほっと肩を撫で下ろすと、ジョースター達に一礼して消えた。それを見た二人はスタンドを仕舞った。春乃妹は花京院の傍によると、その顔を心配そうに覗きこんだ。ジョースターはその様子を見て、つられて花京院の顔を覗き込むが…。

「だめだな、こりゃあ。」
『…え?』
「春乃妹ちゃんには悪いが、手遅れじゃ。こいつはもう助からん。あと数日のうちに死ぬ。」
『…そ、んな…、どうして…?』
「承太郎…、お前のせいではない…。見ろ…、この男がなぜ、DIOに忠誠を誓い、お前を殺しに来たのか…?理由が…、ここにあるッ!」

ジョセフが花京院の前髪を上げる。

「何だ?この動いているクモのような形をした肉片は?」
「それはDIOの細胞からなる「肉の芽」。その少年の脳にまで達している。」

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涙の壺



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