「愚者」のイギーと「ゲブ神」のンドゥール

一行はエジプトの砂漠を横断していた。街で車を買って、ジョセフはスピードワゴン財団と連絡を取り、砂漠で合流する手はずになっていた。

「ヘリコプターだッ!」
「言わなくても見りゃあわかる。」
「スピードワゴン財団のヘリだ…。降りれる場所を探している。」

プロペラが巻き起こす風に、春乃妹は髪とスカートを手で押さえた。承太郎はジョセフに、ヘリに乗るかと聞いた。

「「助っ人」を連れて来てくれたのだ。」
「なんだって!?「助っ人」!?」
「ちと正確に問題があってな。今まで連れてくるのに時間がかかった。」
「ジョースターさん、あいつがこの旅行に同行するのは不可能です!とても助っ人なんて無理です。」
「知ってるのか、アヴドゥル?」
「ああ、よおくな。」
「ちょっと待て、「助っ人」ってことは、当然スタンド使いってことか?」
「「愚者」のカードの暗示を持つスタンド使いだ。」
「「愚者」、「愚者」ゥウフ、へへ、なにか頭の悪そうなカードだな。」
「敵でなくてよかったって思うぞ、お前には勝てん!」
「それと、「愚者」の使い手ともう一人…。こいつはちと…まぁ、チャラいヤツじゃ。」
「もう一人いるんですか!?」
「ああ、そいつはタロットの暗示はないのだが、何とも掴めんヤツだ。」

放している間に、ヘリは着陸した。二人の男がヘリから下りてくると、ジョセフと握手を交わした。

「どっちの男だ?スタンド使いは?」

承太郎は二人の男に言いよるが、男たちはヘリの中を指差した。ヘリの座席には、一人の男が座っていた。その奥に、ぐしゃぐしゃの布が置いてある。男はゆっくりとヘリから下りてくると、迷わず春乃妹の元に歩み寄ってきた。

「あぁ!やっと会えた!この時をどれだけ待ち望んだことか…ッ!花京院春乃妹さん、好きです。結婚してください!」
『…え…?』

男は春乃妹の目の前に膝を付くと、春乃妹の右手を手に取り、甲に口付を落とした。春乃妹は突然のことに目を丸くして固まった。男は立ち上がると、春乃妹の腰に腕を回して引き寄せた。

『…ぁ…、あ…の…、』
「美しい…。」
「おい…、テメェ…、」
「ちょっと、春乃妹から離れてくれないかな…?」

承太郎と花京院が黒いオーラを背に男に近付く。しかし男はげんなりとした顔で振り向いた。

「…物騒な男どもだ。」
『…ぁ、の…放して…ください…、』

春乃妹は顔を真っ赤にしながら男の胸板を押すが、それを見て男は更に気を良くした。

「…ぁあ、赤くなってる…!可愛い…!くぅ…!ジョセフ・ジョースター!」
「な、なんじゃ!」
「俺は彼女に会いたくてこの旅に同行した…。が、彼女が欲しくなった。」
「「「「「ハァッ!?」」」」」
『…ぇ、』
「この旅に協力はする。けど、旅が終わったら彼女を貰う。」
「…それは許可できない。」
「…じゃあ俺は帰るぞ。」
「帰れ。」
「そうです、帰ってください。君みたいな非常識な男に春乃妹はあげれない!」

花京院は男から春乃妹を引き離した。春乃妹は花京院の背に隠れる。

「コイツ…なんかむかつく野郎だな!春乃妹は承太郎んだろーが!」

ポルナレフの言葉に、男はピクリと反応する。

「…その承太郎ってのは、どいつ?」
「…俺だ。」
「…へぇー…、」

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