死神13

春乃妹は自分の寝袋にもぐると、隣にいる花京院の腕にしがみ付いた。目をつぶるが、先程の衝撃的な光景が頭から離れない。赤ん坊の声がする。ついには吐き気を催してきた。もぞもぞと起き上がると、赤ん坊がカゴから出てベイビーフードを食べているではないか。

『赤…ちゃん…?』
「ゲッ!」
『どうやって…、カゴから?』

血の気が引いた。赤ん坊はスプーンについたベイビーフードを全て口に含むと、不敵に笑った。

『…涙の壺ッ!』

春乃妹は涙の壺を構える。戦闘向きではないのは分かっているが、向こうが何をするか分からない。春乃妹は花京院が赤ん坊を警戒していた理由が分かったし、本当にこの赤ん坊はスタンド使いだと確信した。赤ん坊は自分が入っていたカゴを倒さずに出てきた。そして、春乃妹に見られていたことに気付いて目を見開いていた。

『やっぱり、赤ちゃんが…、スタンド使い…!』
「…ケケ、」
『…あなたのスタンドは…、何…、』
「アブー!ブフ!」
『…、』

暫く睨み合いが続くが、赤ん坊は余裕の表情でベイビーフードを頬張っている。しかし、突然首元を掴んで苦しそうな顔をした。春乃妹は驚き、赤ん坊に近付こうか迷ったが、様子を見ることにした。罠だったら危険だからだ。赤ん坊は、苦しそうな表情から一転し、笑顔になって笑いだした。チラリと見えた牙のような歯に、冷や汗が流れる。

「クヒャヒャ!」
『…貴方、本当に赤ん坊なの…?』
「バブウ!ンキャキャキャ!」

再び笑いだした赤ん坊。春乃妹は思わず後ずさるが、赤ん坊は突然耳を押さえると、大人しくカゴの中に戻って行った。春乃妹は訳がわからなかったが、赤ん坊が眠りだしたのを見た為自分も寝袋に戻った。寝袋に入るとすぐに眠気が春乃妹を襲った。






「さあ、みんな!起きておきて!ポルナレフ起きろ!朝食の用意ができたぞ。おはよう春乃妹、朝だよ?」

春乃妹は花京院の優しい声と、微かな揺れに目を覚ました。目をこすりながら起き上ると、花京院は腕をまくってフライパンを火にあてていた。

『?』

春乃妹は急いで寝袋を片づけると、花京院に駆け寄る。

『お兄ちゃん、』
「あぁ、おはよう春乃妹。」
『おはよう…。お兄ちゃん、腕の傷…、』
「ん?腕…?」
『…何でもない…。』
「クス…、大丈夫、春乃妹が言いたいことは分かってるよ。さ…、赤ちゃんのおしめをとりかえてあげよう。春乃妹も手伝ってくれるかい?」
『…うん。』

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涙の壺



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