死神13

『…お兄ちゃん、大丈夫…?』

晩御飯を食べながら、春乃妹は隣に座る花京院に声を掛けた。

「ああ、心配かけて悪かったね、春乃妹。」
『ううん、いいの…。なにかあったの…?』
「…それが、何も分からないんだ。でも…、」
『?』
「何か恐ろしい夢を見たはずなのに、覚えていない…。なぜなんだ…。」
『…私も…、さっきセスナに乗ってる時に眠っちゃった…。私も怖い夢を見た気がするの…。でも、覚えてないの…。』
「…春乃妹もかい?今は?」
『…うん、平気…。でも、すごく怖い夢だった気がするのに…、どうして覚えてないのかな…。』

花京院は春乃妹より先に食べ終わったのか、ぼーっと赤ん坊の方を眺めていた。

「…やはり、あの赤ん坊がスタンド使いなのか…?」
『お兄ちゃん…?』
「…春乃妹、春乃妹は僕の言うことを信じてくれるかい?」
『勿論、信じてる…。』

春乃妹が頷くと、花京院は制服の袖をまくって腕をみせた。

『…その傷…、どうしたの…!?』
「しーっ、まだジョースターさん達には言ってないんだ。…きっと、夢の中でついたんだ。起きている時にこんな傷があったら、誰でも気付くだろう…?」
『…お兄ちゃん…、平気なの?』

春乃妹は涙の壺を出して、花京院の腕を治療しようとした。しかし、花京院はそれを断り、再び口を開いた。

「きっと、あの赤ん坊と何か関わりがあるはずなんだ。」
『…分かった…。』

春乃妹は涙の壺を仕舞うと、赤ん坊に視線を向けた。赤ん坊はかごの中でもぞもぞと動いているようだが、他に変な動きをしている様子はない。

「食器を戻そうか。」
『…うん。』

二人が立ち上がった時だ。二人の視界に、素早い動きでサソリを安全ピンで突き刺した赤ん坊が映った。

「サソリを殺した…。春乃妹も今のを見ただろうッ!?」
『…見た…。』
「こっ、この赤んぼうやはりッ!」
『…おじ様たちに言わなくちゃ!』

二人は急いでジョセフの元に走り寄った。

『おじ様!』
「ポルナレフッ、二人とも今のを見ましたかッ!やはりこの赤んぼう普通じゃあないッ!今サソリを殺したんですッ!あっという間にピンを使ってサソリを串ざしにしたんですッ!」
「花京院、ちょっと待て!なにを言っとるんだ?」
「この赤んぼはただの赤ん坊じゃないッ!一歳にもなってないのに、サソリのことを知っていて、そしてその小さな手で殺したんです!!」
「サソリ…!どこに?」
「そのカゴの中ですッ!!この中に、ピンで刺したサソリの死骸があるはずだッ!」

花京院は赤ん坊の入ったかごを漁る。しかし、サソリの死骸などどこにもない。花京院の額から汗が流れ落ちた。

「本当ですッ!どこに隠したんだ!服のどこかかッ!」
「わかった!花京院!もういい、やめなさい!」
「信じてください、ジョースターさん!春乃妹も見たんです!」

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涙の壺



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