立候補

「ねェ、ちょっとアンタ、」
『…ん…、…ふぁ…はい…、』

空条徐倫は屋上にいた。足元には鞄を枕に眠る男子生徒。そして今、授業中である。

「こんな所で寝てたら風邪引くわよ?」
『…誰…ですか…、メガネ…、』

男子生徒はメガネを手探りで探す。徐倫は彼の手とは逆の位置にメガネを見つけた。ここで彼女のイタズラ心に火がついた。彼のメガネを手に取る。

「ねェ、アンタ…メガネないと見えないタイプ?」
『ぇ、あ、はい。あ、おれのメガネ知りません?』
「ン〜?見てないわよ?鞄は?」
『…あれ、おかしいな…。』

男子生徒は鞄を開けてゴソゴソと探り出す。徐倫はそれを楽しそうに見つめた。男子生徒は不意に徐倫を見つめた。

「な、なにッ!?」
『…どうしよう…。おれ、メガネ無くした…ッ!』

頭を抱えた彼を見て、ついに徐倫が吹き出した。バシバシと男子生徒の肩を叩く。

「ッハハ、アンタサイコー!アハハ!!!」
『え、ちょ、痛い、肩!肩痛いから!』
「はい、メガネ。」
『え!?どこにあったの?!』
「ごめん、アタシが持ってたのよ!アンタ全然気付かないんだもの!笑っちゃったわ!」
『…酷いなぁ…。』

男子生徒は徐倫からメガネを受け取ると、欠伸をしてメガネをかけた。

「ねェ、アンタ名前は?」
『ぁ、前川雄大です。二年の。』
「嘘!同じ学年じゃない!アタシ、空条徐倫よ。徐倫でいいわ!よろしくね、雄大!」
『うん、こちらこそ。よろしく、徐倫。』
「ね、今ここにいるってことは、雄大もサボり?」
『んー…、まぁ、寝坊したから次の時間始まるまでここで寝とこうって思って。』
「そう。それにしても、アンタ…結構綺麗な顔してるのね!メガネやめてコンタクトにしたらモテるんじゃない?」
『えッ!?おれが?!…ないない。ありえないね。コンタクトは一応持ってるよ。でもそんなにつけないかな…。』
「ね、ちょっとつけて見せて!」
『今?…いいけど、』

雄大は鞄からコンタクトを取り出すと、掛けていたメガネを外してコンタクトに付け替えた。徐倫はワクワクとその様子を見つめる。

『…ん、どう…?』
「…ッ、」

小さく首を傾げた雄大。徐倫は赤くなった顔を逸らした。

『…?どうしたの?顔赤いけど…、』
「ぁ…、あァ〜その、やっぱり、」
『似合わないっしょ?だからメガネでいいんだよ。おれ、モテないって知ってるからさ。』
「そんなこと無い!似合ってるわよ?!でも、なんか、他の女の子とかはキャーキャー言いそうって思って。」
『マジ…?』

雄大は再びメガネに付け替えた。

「…ところでさ、」
『ん?』
「アンタ、彼女とかいるの?」
『ぇ、いると思う?…残念なことにいません。…彼女できるといいけど。徐倫は?彼氏いるの?』
「い、いない!」
『うおッ!?そんなに大きい声だす出すなよ!ビックリした…。』
「…あ、ごめん!ねェ、雄大。」
『ほい、』
「アンタさえ良ければさ、」
『ん?』

徐倫は真っ赤になった顔で口を開いた。




立候補
 しても、いいわよ

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