これが二人の
「卒業証書…、有村結。」
校長のDIOは、卒業証書授与式でクラスの代表になっていた。
「卒業おめでとう。」
証書を受け取り、お辞儀をした結はゆっくりとステージの階段を降りていく。DIOはそれを終始暖かく優しい目で見つめていた。
卒業式が始まる前、結は校長室に向かっていた。中ではDIOが結が来るのを今か今かと待ちわびている。ドアをノックすると、優しい返事が返ってきた。
「結、卒業おめでとう。」
『DIO…!』
結はDIOに抱きついた。それをやすやすと受け止めたDIO。結の額にキスを落とす。
「今日は、結の親は?」
『両親共来てるよ!』
「そうか。わかった。」
『?』
式典は順調に進んでいた。校長からのありがたいお言葉も頂き、卒業生答辞では、生徒会長をつとめた結が答辞を読み上げた。そして、それを校長に手渡す時だ。
「ザ・ワールド!」
DIOは時を止めた。そして、時が動き出した時、彼の手には真っ赤な薔薇の花束と小さな箱が持たれていた。さらに彼は、いつの間にか結の目の前に立っている。突然のことにざわつく出席者達。
「有村結、」
『は、はい…!』
DIOは結の前で片膝をついた。シン、と静まり返った体育館。
「卒業おめでとう。…それと、わたしの妻にならないか?」
『…、』
再びざわめき出した体育館。DIOは結だけを見つめていた。差し出された薔薇の花束。結は震える手でそれを受け取った。
『私で…いいんですか…?』
「わたしにはお前だけで充分だ。結しかいらない。」
結は涙を流す。DIOは持っていた小さな箱を開けた。中には指輪が入っていた。DIOはそれをそっと結の左手の薬指に。
「必ず幸せにするとここに誓おう。」
『…はい、幸せにしてください!』
結は涙を流したまま微笑んだ。再び沈まり返った体育館だったが、誰かの拍手が響いた。テレンスとヴァニラ、そしてプッチだ。ヴァニラに至っては号泣している。それにつられて周りの者たちも拍手を送る。二人は拍手に包まれた。
「プッチ、」
「ああ。」
DIOはこのサプライズを最も信頼できるプッチ、テレンス、ヴァニラには伝えていた。プッチがステージに上がり、二人はステージの正面を向いてプッチを見つめた。
「DIO、君は病める時も健やかなる時も、隣に立つ結を幸せにすると誓うか…?」
「ああ。」
「結、君は?」
『勿論です。』
プッチは微笑んだ。
「君たちを祝福しよう。さぁ、誓いのキスを。」
二人は向き合う。DIOは恥ずかしそうに笑う結の頬に手を添える。そっと触れるだけのキスをした二人に、再び拍手が送られた。
「…結、」
『…はい、』
「愛している。」
『私も愛しています。』
式はこうして終了した。二人はその日のうちに教会できちんとした式をとり行った。誰も二人の仲を批判する者はいなかった。
「愛した者と共に生きる、それが人生というものだ。」
卒業式の最後に、DIOはこう語っていた。
これが二人の
幸福論
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