おとぎ話のような

結は生徒会室に来ていた。今日は結の卒業式である。元卒業生であるブチャラティは、結の卒業式を見に来ていた。二人は生徒会室で会う約束をしていたのだ。

『先輩!』
「!結、卒業おめでとう。」

生徒会室を覗いた結。窓の外を眺めるブチャラティに結はたまらず飛び付いた。二人は去年のブチャラティの卒業式から付き合っている。結がブチャラティに第二ボタンを貰いに行ってからだ。そこから、二人の関係が始まる。

『先輩、』
「結、名前で…。」
『…ブチャラティ、』
「おめでとう。」

ブチャラティは結の頭を撫でると、優しく抱きしめた。結はそんなブチャラティにすり寄る。

「一緒に帰ろうか。」
『うん!』

二人は手を繋いで生徒会室を出た。結の荷物をさりげなくブチャラティがもつ。

『ブチャラティ、』
「ん?」
『ありがとう。』

結は目を閉じて、思い出す。去年の卒業式。卒業式が終わったブチャラティの元へ駆け寄る女子生徒達。結もその内の一人だった。

「ブチャラティ先輩!おめでとうございます!」
「先輩!卒業おめでとうございます!」
「あの…先輩…、第二ボタンください…!」
「…すまない、ボタンをあげる人を決めているんだ。」

ブチャラティは第二ボタンを貰いに来た後輩たちをやんわりと断っていた。ボタンを貰いに来た結は、ブチャラティの言葉にショックを受けた。ブチャラティにくるりと背を向けた結。それに気付いた彼は結を呼び止める。

「結!」
『!…せ、んぱい、』
「結、今までありがとう。結のおかげで学校が今まで以上に楽しかった。ありがとう。」
『いいえ!私こそ、ブチャラティ先輩と一緒に生徒会の仕事が出来て、とても、楽しかったです!ありがとうございました!それと、卒業おめでとうございます。先輩に会えなくなるのは寂しいけど、これからも頑張ってくださいね?』
「ありがとう。…結、最後に一つだけお願いがあるんだが…、」
『なんですか?』
「…これを、」

ブチャラティは制服の第二ボタンを取ると、そっと結に差し出した。

「…これを、貰ってくれないか…?」
『…ぇ…?』
「出会った時からずっと好きだった。これはおれの気持ちだ。…受け取ってくれ…。」
『…本当…?』

結は涙を浮かべた。ブチャラティは結の目を見つめて頷く。

『…私も…先輩のこと…、』

好きです。そう小さく紡いだ結の声に、ブチャラティは優しく抱き寄せた。周りの者たちが祝福の拍手をする。ブチャラティが結の涙を親指で拭い、コツンと、額を合わせた。

「ありがとう、結。これからも一緒にいよう。」
『…はい。』

二人はそれから喧嘩の一つもせずに付き合い続けている。結は自分の歩幅に合わせて歩くブチャラティを見つめた。視線に気付いた彼は、首を傾げて結を見つめ返した。

『ブチャラティ、』
「どうした?」
『…私の第二ボタン、貰ってください。』

結はブレザーの第二ボタンを取り、ブチャラティに差し出す。ブチャラティはそれを優しい笑顔で受け取った。

「結、いつまでも愛してる。」
『私も…、永遠にブチャラティを愛してる。』

二人はくすくすと笑い合う。その後、二人は愛の巣を築いていつまでも幸せに暮らしたとさ。





おとぎ話のような
 二人の物語

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