プロローグ
――雨が降ってきた。空は雲で覆われ、誰かの涙のようにポタリポタリと粒が落ちてくる。今は小雨だが、じきに土砂降りになるかもしれない。どこか、雨宿りをしなければ。レシラムをボールに戻すと、地面を一歩一歩踏みしめる。……ああ、久しぶりにこの地に足を運んだなぁ。いろんなものがこみ上げてきて、なんだか胸が熱くなった。
トウヤに負けて、ぼくの心の中では少しずつ何かが変わり始めていた。何か、というのは自分でもよく分からない。
だけど――。
「(……このまま、負けていられない)」
ポケットに入っているボール達も、まだかまだかと揺れている。…トウヤとのバトルが楽しみみたいだ。
「――…!」
目もあけられないほどの光が光った。何だ…?少しずつ目をあけていけば、かすかに映った視界に少女が落ちていくのが見えた。
「え…?」
空から、少女がまっさかさまに落ちていく――…。その光景に驚き口をあけていると、少女はそのまま海の中へ落ちていってしまった。ポケモン?いや、あれは、人間だ。
ぼくはレシラムをボールからだすと、すぐに少女が落ちた付近へ向かった。
これが全ての始まりだった。