『……花子』

『好きだよ、花子』

『お前のことを絶対に離さない』

『悪い、やっぱり俺は――』

「――!――…っ、花子!」

思い切り肩を揺さぶらされて、思わず目がぱちっと開いた。何事だ!そう思い体をおこしたら、何故かそこにはサソリがいてさっきの夢が鮮明に頭の中で思い出される。

あぁ…そうだ、あれは昔の夢だ。馬鹿みたいに、私は恋していて――…。

「……おい、花子。大丈夫か。」

そういって、眉間に皺をよせているサソリがあの人に見えて、思わず胸がチクリと痛んだ。

『花子、大丈夫?熱かい?』

「……な、なんでもないよ。」

思わず彼から視線をそらした。――…サソリは似ているんだ。性格なんて天と地の差ぐらい似てないんだけど、でも口では説明がつかないのだが似ている面を見せる。

……私、サソリとはあんまりいたくないな。

不意にそう思ってしまった自分に、嫌悪感を抱いたりもした。

想い




「…で、あんたは何でここにいんの。」

一番の疑問は、サソリが私の部屋にいる件についてだ。ご飯たべて、デイダラがわかしたお風呂に入って――。…ってして、私は疲れのあまりベッドにダイブしたはずなのだが。何故だ。何故私はサソリに起こされたんだ。

「……一応家の中全部を見ておく必要があるからな。」

「……っは?」

「いつ何時命が狙われるかわからねぇだろ。こっちはこの家についての事情を把握しておかなきゃならねぇんだよ。」

「……いや、誰も命狙わないっつーの。つーか、こっちの世界じゃあんたらみたいなクナイ持ってる人なんて誰一人もいないんだからね。」

「こっちとあっちを一緒にすんじゃねーよ」

「あー…はいはい、わるぅございましたね。」

何かもう話していても拉致があかない気がする。めんどくさくなってきて、私はベッドにまた再度もぐり「じゃあ寝るから」といってサソリに背中を見せたときだった。







「……お前なんで泣いてたんだ?」


どきっと、した。私…泣いてた、の?


「…っ、泣くわけないじゃん。」

「泣いてたっつーの。だから思わず起こしたんだろーが。」

「こ…怖い夢見ただけだし。」

「………例えば?」

うっ!そこで例えを使うか。えーっと…えーっと…。




「は……」

「……は?」

「大量のハチにおっかけられる夢。」

「……………。」

後ろを向いているからサソリがどんな顔をしているか分からない。怪しんでいるのだろうか。呆れているのだろうか。

「……ったく、アホらしい。」

そういって、はぁっと溜め息をついてからサソリは部屋からでていった。…どうやら後者らしかった。私は自分のついた嘘がばれなかったことに思わず安堵の息をもらす。





「(…私、泣いてたんだ。)」

枕を見てみると、確かに何滴か涙の雫の跡が残っていた。
――なんだか、悲しくなった。







「(何も思い出したくない。)」

馬鹿みたいにあの人に恋した自分を――。…そんな自分が、まだあの人を忘れきれてないことも。

全部全部、忘れられたら楽なのに。




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