母親がいなくなってから、なんとか私はデイダラから解放された。…息止める気かこいつ!酸素足りない…!すーはーと息を吸って、なんとか呼吸を整えてから2人を睨んでやった。

「……あんたら、一体何なの。説明しなさいよ」


そういうと、赤い髪の男が「お前の家へ帰ってから話してやろう。」といった。お前やけに偉そうだな。

事情聴取



「――というわけだ、分かっただろ?」

アイドントノォオオォ!っていってやりたいくらい、このサソリとかいう男の説明は非現実的だった。

…一体どこからつっこめばいいのやら。

家へ帰ってきた瞬間にまず、家が大きくなっていた件について。家の部屋が10個ぐらい増えていた。半端ない…私、夢を見ているのではないだろうか。
そう思いながら目をこすっていたら、サソリに頭を殴られた。何故。

とりあえず部屋を全部確認してみると、どうやら2人の部屋も用意されているみたいだった。ご丁寧なことにも。制服やら私服やら、家具も全部整えられていた。

サソリのほうの部屋は全体的に黒で整えられていた。落ち着いた感じなのだが、何か暗い。ひきこもりの第一歩な気がする。

一方デイダラのほうの部屋は目がきたえられるほどの蛍光色。サソリの部屋を先にのぞいたからというあれもあってか、蛍光ピンクの絨毯に蛍光グリーンのタンスとか。見るに見かねない部屋だった。…デイダラの部屋にだけは絶対こないでおこう、そう心に誓った。


そして――私の部屋なのだが。何一つ変わっておらず、当たり前のことなのだが思わずほっと安堵の息をもらしてしまった。3人で一つのテーブルを囲むように座ってひとまず自己紹介。

『おいらの名前はデイダラだ、うん!よろしくな花子!』

明るくうるさいほうがデイダラで、

『…サソリだ。様はいらねぇ。』

俺様系の眠たそうな目をしているほうがサソリ。っていうか私いつ「様」なんてつけましたか?いるとかいらねぇとか言われたの初めてだけど。



「……で、あんたらは異世界からの忍者…ってこと?」

「そういうこった」

「…………。」

――で、今に至るのだが。信じられない話しだ。自分達は忍で、何かがあってこの異世界へ飛ばされてきたはいいが記憶まで一緒に飛ばされているらしいのだ。

そんなの知らんがな。

といいたいところだけど、何故か彼らは私の双子の兄という設定になっている。しかも、私と同じ学校の制服ということは――…何者かの黙示録じゃないか?


どうやら、人事ではすまなくなってしまった。




「……はぁ。考えても拉致があかないし、とりあえずデイダラお風呂わかして。」

「って、おいらが?!」
「あんたさっきお母さんにお風呂わかしといてって言われてたじゃん」

「……っち、わかったよ…」

渋々といった感じでデイダラは立ち上がるとそのまま部屋をでていった。…お風呂場分かるのかなあ、なんて心配になったがまあ所詮は家の中だ。迷子になることはないだろう。



「…じゃあ、私もそろそろご飯でもつくろっかな。」

このままお母さんを待っていても後1時間は帰ってこないだろう。――めんどくさいし、ぱぱっと作っちゃおう。




そう思っていると、サソリが私の腕をつかんできた。


「……え?え、あの、え?」

「……俺のぶんは、必要ない。」

「え?」

「だから、俺のぶんのご飯は作らなくていい。これからもずっとだ。」

そういうと、サソリは部屋からでていった。――きっと、自分の部屋に帰っていったのだろう。



「(……一体、どういうことなのだろう。)」

私のご飯は食べれないって言うのか。失礼なやつだ。私は少し頬を膨らませながら、下へと降りていく。


「(なんだあの男、性格悪い…)」


でもサソリとかいう男は…ちょっとだけ、あの人に似ているんだ。中身は全然違うが、目元とかがさ。


「(って、何昔とかぶせてんだろ)」

もう戻らない時間を私は何度悔いただろう。――もう考えるのはやめよう。辛くなるだけなのだから。



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