「待ぁてぇえええええ!」


「っち…いつもよりしつこいなぁ」


されるがままに私はことのなりゆきを見ているのだが、さっきから鬼ごっこのように2人はぐるぐるぐるぐる走り回っている。…なんかあれだよね。ト○とジェリーてきなあれだよね。喧嘩しても仲いいよてきな、ね。



「いぃいい〜ざああああ〜やあぁぁあああ!」


「いい加減死ねばいいのに…」


ぼそっと臨也が呟いた言葉は聞かなかったことにしよう。静ちゃんがト○で、臨也がジェリーだったらジェリーは絶対そんな残酷なこと言わない。


神に誓って言える。



「花子、ちょっと俺の首のところ巻きついてくれる?」


「っは?え、――」


わけがわからない、といった表情をしている私を無視して臨也は速度をあげる。ちょっとちょっとちょっと…!ってか人1人もってるのになんでそんな走れるの!どんな体力してんの!


静ちゃんは超人だからまだわかるけど…!




「どこいくの?!」


「ビル、捕まってないと落っこちるよ」


「嘘?!」


私は言われたとおりに臨也の首にまきつく。…そうこうしているうちに、臨也はビルの階段をたったとのぼる。後ろからは叫び声とともにドンドン!と今にも階段をぬけおとしてしまいそうな音も聞こえてくる。


「待てやああああ!」


「待てっていって待つ馬鹿はいないよね」


最上階まであがると、扉をあける。――ぶわっと風が吹き込んできた。臨也は私を抱えたまま、ビルの端へ走っていく。


え?この人なにするの?死ぬの?落ちるの?


「ちょ、臨也やめてぇえええ!私まだ死なない!死にたくないぃいいい!」


「暴れると死ぬよ?」


「っひ……!」


ビルの端へいくと、臨也は軽々とジャンプ。隣のビルに着地して、ヒラリと黒いコートをなびかせる。



「あぁぁぁあ!殺す気か!」


「まあ、人をもったまま渡ったことはないから命がけだったけどね」


「最低だ!この人最低だ!」


ぶーぶー言う私をめんどくさそうに受け流す臨也。…ちらっと後ろを振り返れば、さすがの静ちゃんもビルからビルへ飛び移るのは自信がないのか、足がすくんでいるように見える。




「……静ちゃん、こっちこれないみたいだね。ざまぁない」


そういってさも嬉しそうに笑っている臨也。…賭け事で勝ったかのような、満足げな表情を浮かべている。



「…どーでもいいけど、いい加減私を離してくれないの?」


「あぁ、そうだった。重たい物もってたんだった」


そういうと、臨也はぱっと手を離す。ドスン!という音とともに、私はお尻を思いっきり地面に打ち付けた。…ってかいきなり手離す馬鹿いる?!もっと丁寧に扱わない?!






追いかけっこ




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