「うぉおおぉおっぉおぉおお!行け、行けえぇええぇぇえええええ!よっしゃ、高感度アップじゃぼけェエエエ!」
「……何してんの、花子」
「――って、うわ?!何で臨也いるの?!」
馬鹿野郎、家に入る時はインターホンぐらいならすだろ普通!そういってやると、「鍵かけないで1人家に閉じこもって何時間も乙女ゲーやりっぱの君に言われたくないね」と返された。
…それを言われたら何も言い返せない。うん。
「そんなゲームばっかりしてるから現実で彼氏つくれなくなるんだろ」
「な…!そんなことないよ、日々私努力してるもん!静ちゃんにアタックしまくってんじゃん!」
「君がただ突進して静ちゃんを困らせてるだけにしか見えないけど」
そういって臨也がクスリと笑う。――こいつ、私のメンタルをボロボロにしようとかいう魂胆なのか。だが昨日静ちゃんに助言を貰ったばっかりの私は一味違う。
『あー……あれだ。ノミ蟲の言うこと、真に受けんじゃねーぞ。アイツの大半は嘘しか言わねぇから。特に俺関連のことはほぼ嘘しか言わねーやつだ、自分の利益目当てのやつだからあんまりアイツの話しに耳傾けんなよ』
…臨也の話しには耳を傾けない。そう決めたからには無視を決め込もう、無視を。
「………」
「急に黙って画面見つめないでよ。せっかくきてあげたのにさぁ」
「………」
「……俺よりゲームをとるの?」
「………」
「あぁ…完全に眼中から消えてるようだ。っていうか、あきらかに無視してるよね。…もしかして昨日あの後静ちゃんに何か言われた?」
「………」
「フーッ」
「!!!!」
臨也は私の肩をつかむと、そのまま顔を耳元によせて息をふきかけてきた。鳥肌とともに震え上がった私は、拍子に「ひゃっ!」という何ともコメントのしがたい声をだしてしまった。…しかも、地味に裏返った。
臨也はそんな私を見てクスクス笑っている。ギロッと睨むと、「怒った?」なんていうもんだから本当にカチンときた。
とことん無視を決めてやる。
「ねえ、喋ってよ」
「………」
「……はぁ。君の好きなハーゲンダッツ、買ってきてあげ「嘘?!……あ」
ハーゲンダッツにつられて思わず返事を返してしまった。
や っ て し ま っ た 。
アイスに何つられてるんだ私!あー、もう!馬鹿馬鹿!そんなことを思っていると、臨也はニヤリと笑った。
――完全に釣られてるよ、私。
「花子は嘘がつけないタイプみたいだ」
「……嘘つきのアンタには言われたくないけど」
「あぁ、でも素直になることはいいことだと思うよ。無駄に反抗期で、物を投げたり暴力をふるうどっかの誰かさんと比べれば全然可愛いもんだ」
明らかに静ちゃんの悪口をいっている臨也を睨むと、「これで機嫌なおしてよ」といってハーゲンダッツを頬にぴとっとくっつけられた。
冷た!咄嗟に後ろに身を引くと、臨也はクスクス笑っている。…何したいんだ、この男。
「……あの、いつ帰るんですか」
「今日泊まらせてよ」
「今すぐ帰れ」
そういうと、臨也は「冗談」なんて笑っていた。…結局何時に帰る気だ、こいつ。臨也がいる限り、乙女ゲーはできない。
私は諦めてゲームのスイッチを押して電源を消した。
間接キス