「――あーもういいよ。私帰る」
とかいって回り道して静ちゃんにあえばいい。ここにいたって、絶対臨也は通らせてはくれない。
…何であんなニヤニヤしてんの、なんかうざいなあ。
「…とかいって、回り道とかしちゃうんじゃないの?」
「(ばれてんなら通らせろよ)」
「…否定しないあたり図星、ってところかな。静ちゃんなんか放っといて、あっちでお茶でもしようよ」
「断る」
「…冷たいねぇ」
「この前あんたとお茶したら、私がトイレいってるうちにお茶にタバスコいれたじゃんか」
「まだ根に持ってんの?」
「もつにきまってんだろーが。けろっとした顔で何てことしてくれんだ…!あんたとは絶対どこも行きたくない!」
「やだなー。それ、照れ隠し?」
「違います違います」
これ以上話し長引かせてたら、静ちゃんが行ってしまう。私はくるっと踵を返し、そのまま走り去ろうとしたのだがやつの手は長い。にゅっと伸びてきた腕は私の手首をいとも簡単に掴んでしまう。
「――ちょ、いい加減ガチで怒るよ。花子ちゃん怒ったら怖いよ」
「あー怖い怖い」
「…何かうざいなあ」
「それ褒め言葉」
そういってニッコリと満面の笑みを浮かべる臨也にはもうお手上げだ。…彼に捕まったら最後、絶対静ちゃんには会わせてはもらえないのだから。
「静ちゃあぁああぁあああむぐっ!」
「っち、大声出しやがって…」
舌打ちしながら臨也は私の口を手で覆うのだが、時すでに遅し。――静ちゃんは、耳いいからね。野生だからね。絶対助けにきてくれるからね。
「いぃいい〜ざぁあああ、やあああああ!」
道路の標識をもって静ちゃんが目の前に現れるのは私の計算内、だ。強行手段だが、こうでもしないと会えないからね!会うためなら私、何でもするもんね。