「それよかお前、何で臨也といたんだ？」


「歩いてたら静ちゃん発見したから、嬉しさのあまり声かけようとしたんだけど目の前に臨也がモンスターのごとく現れて私の邪魔をしてきたわけ。で、逃げるのコマンドを選択したんだけどあっさり捕まって逃げれない状況に。最終手段で大声だしたら静ちゃんがかけつけてきてくれた、ってわけ」


「……ドラクエかよ」


そういって静ちゃんが珍しく目を細めて笑った。


…私からしたら毎日がバーチャル世界だけどね。臨也っていうボスとこれまで何度戦ってきたことか。ラスボスしかでてこないドラクエにいる気分だよ、静ちゃんがいるし全然平気なんだけどね！



「静ちゃんとやっとまともに話せるね」


「あぁ…そういやぁ、お前ここしばらく見なかったな。何してたんだ？」


「え？何、寂しかった？寂しかったの、静ちゃん？」


「んなわけねーだろ。毎日毎日会いにくるやつが、１週間も会いにこねぇなんて普通に考えておかしいだろ」


「っちぇ」


ちょっとでも寂しいと思ってくれてもいいのに。…まだ問いかけてくるだけマシか、プラスに考えよう。



「……臨也が、」


「あ？」


「臨也が、『静ちゃんに彼女できたんだよ』とかいう嘘ついて、地味に落ち込んで家に引きこもってた」


「…………」


「いや、まあ、後から『嘘だよ。あれ信じてたの？』って思っきし鼻で笑われたんだけどね」


むかつくけど、１週間私は臨也のついた嘘を信じて落ち込んでたのだ。


…相変わらず最低なやつだ、いたいけな女の子を騙しやがって！




「……お前さ、」


「？」


「あー……あれだ。ノミ蟲の言うこと、真に受けんじゃねーぞ。アイツの大半は嘘しか言わねぇから。特に俺関連のことはほぼ嘘しか言わねーやつだ、自分の利益目当てのやつだからあんまりアイツの話しに耳傾けんなよ」



そういって、静ちゃんは少し困ったように眉間に皺をよせながらも、私の頭をポンポンと叩いた。


ぱふぱふ。

目線をあげれば、少し恥ずかしげな静ちゃんと目があった。




――何この可愛い生き物。

誰か、私に静ちゃん下さい！うぉおおおおお！




「静ちゃん、好きっ！」


「ってうぉ？！何で抱きつくんだてめぇ…！」


「うひひひひ」


「……やめろ。せめてその笑い方やめろ、下品だ」




そういいながらも、静ちゃんは小動物を扱うように私の頭をよしよしとなでてくる。…その優しいてのひらが、好きだ。静ちゃんはやっぱりいい人なんだよ。



みんなが知らなくても私だけ知っていればいい秘密。






END.