「さて、と…。まだ遊んであげたいけど、残念ながら時間のようだ」
そういって臨也はにっこり微笑んで、「じゃあね」といいながら嬉しそうに行ってしまった。……こんだけ人を巻き込んどいて、放置プレイかよ。マジで何なんだよ、無駄にむかつくなあ。
そんなことを考えていると、むこうのビルにいる静ちゃんが「おい!」と私に声をかける。
「静ちゃああああああーん!」
「…大丈夫か聞こうと思ったが、頭以外異常はないようだな」
「静ちゃん冷たいなあ」
今すぐにでも静ちゃんに抱きつきたいぐらいなのだが、ビルとビルを走って飛び越える勇気はない。というか、普通の人はビルとビルは飛び越えないはずだ。落ちたら即死、一発であの世行き決定だから。
だから、臨也以外にビルとビルを飛び越える人なんて――。
「ちょっと、そこどいてろ」
「え」
「もうちょっと左にずれろ」
嫌な予感しかしない。言われたとおり左にずれると、静ちゃんは思い切り後ろにさがって助走をつけてからジャンプ。
あぁ、マジで臨也も静ちゃんもなんなんだろう。
普通飛び越えないよ…命もっと大切にしてよ。
「……飛び越えたぜ」
「…うん。分かった、分かったから静ちゃん何そのどや顔」
「う、うるせぇ!俺だってやればできるんだよ」
耳まで真っ赤にした静ちゃんは、恥ずかしそうにぷいっと横をむいてしまった。…っていうか、何で静ちゃんこっちのビルにきてくれたのだろうか。ちょ…期待してもいいのだろうか。
「静ちゃん」
「あぁ?」
「私のこと、好き?」
「頭大丈夫かお前。…新羅のとこいくか?」
「それだけは勘弁」
新羅のとこにいったら尚更頭がおかしくなりそうだもん。それに、セルティとの愛のストーリーとか平気で5時間語るから会いたくもない。
セルティに会うなら全然楽しいんだけどなあ。