『――お前は殺す価値もない』


膝ががくっと落ちて私は地面に崩れ落ちた。頬をぬらすこれは何なのか。雨なのか、涙なのか、それすら私には判別ができなかった。


絶望、苦痛、悲哀。


言葉でたとえるならどれがよいだろうか。



私の横を通り過ぎるサスケが冷たくて、引きとめようと声をだしているのにかすれた声しかでない。


もう二度と戻れないの?

もう二度と笑いあえないの?




ぼんやりと視界が霞んでサスケがどんどん遠くなる。




『いかないでよ……サスケ』



やっとでた言葉は彼に届いたのか、届いてないかは分からない。


サスケは何も言わずに消えていく。その背中が冷たくて、心が痛くて、もう二度とあの頃に戻れないのだと実感した瞬間体中の力が抜けて立ち上がれなくなっていた。



「花子、」


困ったような顔をしながらサイが私に手を伸ばす。


どれほどの時間がたったのだろうか、私には分からない。だけど私はサイの手を掴む余力すら、残っていなかった。







一致しない想い






俺はどれだけ酷い暴言を花子にはいただろう。

俺の言葉1つ1つに傷つく表情をするアイツは、きっと俺が去る頃には心がズタズタになっていたのだと思う。



『いかないでよ……サスケ』


どんなに酷いことをいっても、アイツは俺を追ってくる。その度に俺は追ってくるなと心の中で呟き、だが心のどこかではアイツに救いを求めていた。


――もう、戻れないと分かっているのに。




何もかも戻せたらどれだけいいのだろう。そんなことをいくら考えたって時間の針は戻らない。俺はもう取り返しのつかないところにいる。



「(――…こんな手で、アイツに触れられるはずがない)」



こんな血のついた、汚れた手で…。


くらっと眩暈がして壁に寄りかかれば、ポケットから写真が落ちた。ナルトやサクラ、花子が楽しそうに笑っている。



「(……捨てよう)」



こんなものがあるからいつまでも断ち切れないのだ。殺せる相手を殺すことができないのだ。写真をズタズタにひきさいて捨てれば、心が晴れる。そう思ったのに、写真を破っても破っても心は重くなるばかり。


ああ、俺はもう戻れない。もう帰る場所などない。




地面に膝から崩れ落ちた瞬間、花子を思い出した。





アイツの笑顔は、俺にはつりあわないような太陽のような笑顔だった。









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