第二幕


 カンカンカン、カンカンカン
ローファーの踵が錆びた鉄を踏み、音を鳴らして階段を駆け上がる。スカートの裾が脚に合わせて動き大きく振られる手が彼女の苛立ちを示していた。

 鉄の上に黒い靴が乗る、高い鉄塔の天辺から人の集まる住宅街を見下ろす影が1つ揺らめいていた。
「全く、無駄な事を…」
退屈そうにソレは言った。諦めのような、哀れみのような、苛立ちのような、そんな感情を言葉から読み取れるが表情はいつもの笑みを浮かべていた。

 寂れたビルの屋上に退屈そうな青年がいた、黒い学ランを着込んだ青年はビルの端から足を出しグラグラと身体を揺らす。ぐるりと回って、落下した。
頭に被さるバケツの穴から真っ赤な目だけが覗いている。

 「奇遇だね」
地に降りた先生はこちらを睨みつける彼女にゆっくりとした動作で声をかける、彼女にはそれすらも苛立ちを煽るようにしか見えなかったがね。
「ほんっとうに奇遇だな、何だ?尻拭いにでも来たのか?」
「まさか!君達とやりたい事は一緒だよ、ただ」
「ただ、手段が違うだけだ。だろ?聞き飽きたぜ」
吐き捨てるように彼女は言う、これ以上こんなものに時間を費やす暇などないのだから。
「おいおい、そんな言い方はないだろう。君は相変わらず乱暴だなぁ」
「うるせぇ」
ガチャァン!何か固いものがが落下する音と痛っ!という間抜けな声が聞こえ、彼女は舌打ちをしながらそちらへと駆けていった。
「人間ごっこかい?…まあいいさ」
その背を見送った先生は、ゆっくりと彼女達に背を向けて消えた。

 断片的なものばかりだ。何一つ理解できることのない文と耳障りのいい薄っぺらい言葉選び、実際にこれらに深い意味なんてないしその内全て解ることなのだから今は曖昧にしておいたっていいだろう。



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