第一幕


 この物語の最大の原因はあの子だけどこの物語を続けたのは神凪創だし…そもそも誰が一番やからしたかと言ったら【自分】なんだよなぁ。


 深い森と青い空と遥か遠くに見える廃都、それくらいしかないこの世界の朝はとても騒々しいのだった。
 目覚し時計が大きな音を鳴らしながらぐるぐると回転し窓の外へと放り投げられた。放り投げた本人は大きな欠伸をしながらベッドを飛び降りキレイに着地、ついでに投げられた目覚し時計は外でウロウロしていた死体の頭に直撃していたがこれは別に関係ないのだ。
朝からドタバタと騒ぐ彼は弐宮悠灯、2番目にここへ来た子供であり一番のやんちゃ坊主としてよく怒られている。
「あー!!また目覚し投げてる!」
「弐宮、またなの」
開いた扉の外から二人の少女が声をかける。ふわふわと短いツインテールを揺らしながら大きな声を出している三虎日菜と眠たげな声で呆れた表情を浮かべる四羽夏音、それぞれ3番目と4番目にやって来た子達だ。そんな二人を一瞥すると弐宮はパジャマ代わりのパーカーを脱ぎ捨て不機嫌そうに「うるせぇ…」と小さな声で呟いた。
「ちゃんと拾って来ないとまた怒られても知らないから、三虎いこ」
「うん!いこいこ!!」
扉が音を立てて閉まり遠のく足音を聞きながらやっと静かになった部屋で彼はわざとらしくため息を吐いた。

 キッチンに向かえばお腹がぐぅと動くようないい匂いがあたり一面に漂う。並べられる料理の皿と楽しそうに笑う他の子供達、2番目の子供がそこに加われば遅いと怒られたりおはようと笑ったりちょっとつまみ食いをしようとしてパチンと手を叩かれるなんて事もある。楽しそうに騒ぐ子供達に〈先生〉にニッコリ笑って声をかけた。
「早く席につかないと朝食が始まらないじゃないか!」
パタパタパタパタ!スプーン取ってー!はい、スプーン。俺そっちの皿がいい!これは僕のだ。行儀が悪いので喧嘩しないでください!ドタバタ騒ぎなら全員で席に着きに賑やかで幸せな朝食が始まったのだった。サクサクフワフワのトーストにジャムを塗るかそれともマーガリンか、いやいや目玉焼きをポンと載せていただくのもいいでしょう!醤油?お塩!ケチャップ!ソースにマヨネーズ!?あれ取ってこれ取って美味しいね!そうだね、これ嫌い!我儘言わない!朝から騒がしくて暖かくて憎むべきものの何一つない清々しい風景の映る窓の外で壊れた時計の破片を散らしながらゾンビはとぼとぼ森へと帰っていった。


 「五月、何を読んでいるんだ」「これですか?概念体、についてですね」「そうか」「…興味ないですか?」「ない」「一音は、まあそうでしょうね…」

 「困った、困った」「困ったのー?」「ああ、困ったね」「よしよしする?」「いや、必要ないよ」「シングよしよし上手だよ!できるよ!」「それでも必要ないんだ」「死んじゃったから?」「…」「×××はまだみんなの事、嫌いなの?」「そうさ」「悲しいね」「うるさいなぁ、化物が」「化物じゃないよ!シングだよ!!ぶー!」「そうかい」



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