ママ

 
 あの子は優しい子です。あの子は寂しがり屋です。あの子は笑うときほんの少しえくぼができます。あの子は怖がりです。あの子は運動も勉強もあんまり特じゃないんです。あの子はピアノが好きです。あの子は青のクレヨンが好きです。あの子は私の息子です。先生おねがいします、私の息子を助けてください。
 
 青空を背景に白いカーテンが揺れる。ゆっくりとしたピアノの美しい音色が流れる中、高い音が響く
「ママ、ぼくのピアノ聞いてくれてる?」
「ええ、聞いてるわよ。」
「ママ、ぼくのクレヨン知らない?」
「そこに置いてあるわよ。」
「ママ、ぼく次のお誕生日には犬がほしいな!」
「あら、どうしたの?」
「友達になって、一緒に散歩して遊びたいんだ!」
「そう、そうなの。今日はもうおしまいよ。」
「はーい、ママ」 
今日も曲は途中で止まる。
ピアノを奏でる事をやめたロボットの背に手を伸ばした老婆はそっとそのスイッチを切った。
きっとこの曲が最後まで流れる事はないのだろう
 

戻る
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -