今日は、2




「冗談だよ」


俺の顔を覗き込んだ彼女は言った。
そんなに困んないでよ、と笑う。
今日初めて、ちゃんと彼女の笑った顔を見た気がする。


「ねぇ、なんで私の誕生日って知ってたの?」


そりゃあ……と俺は言葉に詰まる。
バレンタインのチョコ渡して、半分コクったようなものだけど、面と向かって゛好きだから゛なんては言えない。
別に、これはチキンとかじゃないと個人的に思う。


「最初の自己紹介で、言ってただろ?」


うん、嘘はついてない。
事実思ったんだし。


「それだけ?」


彼女は、そう聞いてきた。
まだ、続きはある。


「俺と反対だったら、良かったのになって思ったから、印象に残ってたんだよ」



「…ってことは、丹羽くん、ホワイトデーが誕生日なの!?」



彼女の目が大きく開かれた。
まぁな、と俺は答える。
ホントに悲しいよな、
ホワイトデーが誕生日なんて。
いつも俺、忘れられてねだられるし。

でも、なんだか、それが始まりだったんだなって思い出した。

あ…、俺と反対だと思ったら、親近感が湧いてきて。
気付いたら、向坂のことを目で追ってた。
ろくに喋ったこともないし、喋りかける勇気もなかった。


だけど、今日このバレンタインにはチョコレートを渡そうと決めていた。


じゃないと、俺は言えないまま終わりそうだしな。
キッカケがないと、踏み出せない俺だから。
じゃあさ、と彼女は口にする。




「楽しみにしててよ、今年のホワイトデー」




彼女は、俺の大好きな笑顔でそう言った。


……どうすんだ、俺?
今でも嬉しさで死にそうなのに、誕生日なんか耐えられない。


俺は必死で火照っていく顔を手で隠した。




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