パジャマパーティー 「布団よし、枕よし、お菓子よし!」 目の前では、歩が満足気に頷いた。 ここは、私の部屋。 いつもいるはずの雷神と風神はいなくて、歩とカオルと私の三人がいる。 もちろん夜だから、みんなパジャマ。 そう、これからパジャマパーティーが始まるんです。 パジャマパーティー 「ほらほら、苺、カオル!」 歩は自分の布団の上で、テレビの前に座る私たちを急かす。 そんな歩は下の丈が短いグレーのコンビネゾンで、太股がやけに露出している。 やっぱりモデルやっているだけあって細いな。 ちょっとだけ自分と見比べて、ガックリする。 「呼んでるわね」 ふふっと隣のカオルは笑って立ち上がった。 カオルは水色のネグリジェという感じの服で、大人っぽいカオルにはぴったりだ。 ちょっぴり透けている感じは女子だけだから、許される気がする。 いや、でも、やっぱりドキドキするんだけど。 「苺?」 と立ち上がったカオルに顔を覗き込まれ、今行くと私も自分の布団の上へと向かった。 ちなみに私はピンクの普通のパジャマ。 なんか二人とは浮いてるかも。 もうちょっと個性がある方が良かったかな……。 って、気にしちゃダメだよね、人それぞれ! 「でも、本当に雷神たち追い出しちゃってよかったのかな?」 私はそう口にした。 女子だけでの話があるから、今日一日はどこか行っててと話したら、風神はすぐ分かりましたと返してくれたけど、雷神ははぁ?と返し結局今日の今日まで納得のいってない顔付きで出ていった。 「いーの、いーの!雷神は」 歩は笑う。 いいのかな?とカオルに顔を向けると、まぁと笑った。 じゃあ、いっか。 「おし、じゃあ、パジャマパーティー始めるよ!!」 元気な歩の掛け声で、女子トークが始まった。 友達の話や、最近のファッションの話から始まり、色々な話をした。 笑ったり、時には憤慨したり。 そして、やっぱり最後はお決まりの…… 「さぁて、最後はやっぱり恋愛だよね!苺から好きな人のことをどうぞ!!」 「えぇっ、私から!?」 思わず大きな声を上げてしまった。 恋バナにいくと分かっていたけど、まさか私からなんて。 「あ、別に好きな人じゃなくても、タイプの人はこんな人とかでもおっけー」 にっと笑った歩。 拒否権はないみたい。 「えっと」 なんかやっぱり照れる。 カオルには自分の好きな人は分かっている訳だけど、タイプの人を言おう。 「背は自分より高くて、ちょっと兄貴みたいで頼りがいのある人で」 歩は、うんうんと大きく頷きながら、カオルはにこにことしたまま、聞いている。 「バカでアホでどうしょうもないけど、自分のことなんて放っといて他人のためになれる人で」 あれ………? なんか途中からもろ雷神って、言ってる気が………。 カオルに目を向けると、ふふっと笑われた。 や、やっぱり、そうなんだっ………。 は、恥ずかしい。 赤くなった顔を隠すために俯いた私。 「じゃあ、次はカオルだね」 俯いたことで話が終わりと思った歩は、カオルに話の矛先を向けた。 「わ、私?」 いきなり話を振られたカオルは戸惑ったが、うん、だって時計回りだからと歩が言うと、納得した顔を浮かべた。 カオルの好きな人は知っているから、改めて聞くのはちょっと新鮮かも。 「真面目で、礼儀正しくて」 あ。 風神だって、すごく分かる。 それに、それを話すカオルの顔も優しい。 「誰からも信頼されていて、優しい人」 うんうん、とまた歩は頷いて、 「そっか、そっか。二人とも恋してるんだね!」 「「えっ!?」」 カオルと私の声が重なる。 なんで、バレたの? 「二人ともなんか誰かを思い出した感じに言ってて、バレバレだよ」 そうなんだ。 カオルと顔を見合せ、どちらともなく苦笑する。 「私、応援するから力になれることあったら言ってね。だって友達なんだし!」 歩はブイッとピースサイン。 今更ながら、いい友達をもったなと思った。 きっと隣のカオルもそう思ったに違いない。 「じゃあ、パジャマパーティーおしまいだねっ」 歩は電気のスイッチに手を伸ばそうとした。 あれ………? なんか、言ってないことが…………あ!! 「歩、好きな人言ってない!!」 「バレちゃった?」 てへっと舌を出したお茶目な歩。 「ズルいわ、歩」 とカオルが言うと、仕方ないな〜と歩はこちらを向いた。 真剣な顔の歩に緊張して、ごくりと唾を飲む。 「ひ、み、つ」 と笑った歩に、カオルと二人で捕まえにかかった。 まだまだ長い夜は続きそう。 ****** 「ハックション!!」 盛大にくしゃみをした雷神。 「少し押さえてくれ」 俺の指摘に、すまんと雷神素直に謝った。 「あー、けど、何で追い出されるんだよ」 雷神は手足を投げ出して、寝転がった。 苺の家を今日だけ追い出され、天界の風神の家に二人はいた。 「何が気にくわないんだ?」 一日の辛抱だろと言った顔で俺は聞く。 少し躊躇った様子の雷神がバカにしないか?と聞いてきたので、しないと頷く。 「歩が俺の悪口を延々に言ってそうな気がすんだよ」 唇をとらがせて、言う雷神。 なんだ…そんなことか。 「あ、なんだそんなことかとか思っただろ!?」 「いや」 「ぜったい思ったな、今!」 なんだか、必死にそう言う雷神を見ていたら笑えてきた。 そんな今日も、平和だ。 |