ある日の出来事



「苺、いるー?」
そう言いながら、苺の部屋の戸を開けると、


゛ガバッ゛


いきなり腰回りに抱き付かれた。
な、なに!?
下を見ると、視界に入るのは金髪。
「何やってるわけ!」
ガンッと抱きついた不届きものに鉄拳を食らわす。
いってーな……と頭をおさえながら、その髪と同じ色の瞳を持つ雷神はゆっくりと立ち上がった。
いってーなじゃないし。
この………変態神っ。
しかも、
「何よ、これ?」
私の服の裾を掴む私より大きくゴツゴツした手。
「な、なんでもねーよ」
と言いつつも、雷神の手はしっかりと握って離さない。
なんかおかしい、今日の雷神。
なんだか頻りにキョロキョロして、辺りを見回している。
何かに怯えてる、そんな感じが……、


゛ブブブ……゛


突然聞こえてきた羽音。
その方向に向くと、


゛バンッ!!゛


大きな音とともに、目の前に広がる青。
「吃驚させたなら、すまない」
前にいきなり現れた風神が頭を下げた。
そんな風神が手にしているのは、苺の部屋にあったファッション雑誌を丸めたもの。
そして、
「それ、ゴキブ」
「その名を言うんじゃねー!!!」
言い終わる前に、雷神に遮られる。
ファッション雑誌に引っ付いているのは、台所なんかでよく見られるG。
風神の的確な一撃によって、完全にのびている。
まさか、
「これだけのために、私に抱きついたり、服を離さなかったり?」
話題になっている雷神はそのファッション雑誌をけして見ないようにして、こっち来んなと何度も繰り返している。
ちらっ、と風神はその様子を見て口にした。
「あぁ、全く情けない」
率直であるがこそ、容赦のない風神の一言。

「誰だって、苦手なもんはあるんだよ!!」

やっと、手を離した雷神は叫んだ。



ある日の出来事
(笑い話で済むでしょう)



この後、苺はまだそのファッション雑誌を読み終えてなかったために雷神が買い直さなければならないのは、また別のお話。




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