月と地球を架ける君。




真っ暗な部屋に入り、窓越しに夜空を見上げた。
望がピカピカにしたと自慢していた窓ガラス。
おかげでくっきり見える。

僕は、窓に手をかけた。


あの日から習慣になっていたんだ。

君は気まぐれにやって来る。
分かっていたのに。分かっていたはずなのに。
体が勝手に動く。心が疼く。

夜空に輝く大きな丸を見ていると。君に逢えるんじゃないかって。

淡く儚い期待を頼りに。

僕はゆっくり窓を開ける。


あぁ、月が光っている。

太陽の光を浴びているだけで、自ら光っているのではない。
高校生の自分には当たり前すぎる事実。

昔は信じていたな。月自身が輝いているのだ、と。
今さら思い出して笑えた。

月の満ち欠けは月の気まぐれなんだ。なんて勝手に思ったりして。
そのせいか満月はよく見上げたものだ。
月がご機嫌な気がした。
凄く……嬉しかった。

幼いときに信じていたものが間違いだったと知ったとき、対して落胆はしなかった。
頭が順応し、周りに合わせるようになっていた。
そのことに気付いたとき、僕は、虚しいと感じたんだ。

でも、昔信じていたものが真実だとしたら…。



僕のことを少年と呼ぶ君は。かつて想像していたものには遠い。
でも信じていたものが真実だったのだと確信できる、不思議な存在。

今宵も君は現れる。いつものように突然に。そして、あっという間に去っていく。


月と地球を架ける君。
また出会える日を、僕は待つ。




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