新旧交代



ごごごごご………


大きな体を揺らして、
大きな音を響かせて、
貴方は最後の仕事をします。
私はゆっくりと貴方に触れました。
至るところに、傷がある貴方に。
あ。
下の方にあるへこみを発見して、しゃがみこむ。
これは会社に遅れそうになって、急いでいたときに転けて足をぶつけたときのもの。
あのときは痛かったなぁ。
青アザまで出来た。
貴方もこんな大きなへこみが出来てしまって。
見覚えのないこれらの傷も全て、きっと私がつけたものでしょう。
そして貴方には、感謝してもしきれないほどお世話になりました。
毎日のことは言うまでもなく、
会社で失敗して落ち込んだときには、詰め込まれたものに文句一つ言わずに働き続ける姿に励まされました。
五年近く付き合っていた彼氏にバッサリと振られたときも、貴方にグルグルと回されるものを見つめて、私自身のその過去を洗わせてもらいました。
本当に、貴方には感謝の言葉しか出ません。
がこん、と最後の作業も終わり、私も立ち上がった。
ピーピーと貴方は最後の声を上げる。
「お疲れ様、」
私は口に出して、十年を共にした洗濯機の蓋に手をかけた。



新旧交代
(次は、ななめドラム式で)





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