一人じゃないからこそ、



拝啓、みんな。

なんだか今、私の家は拾った魔術師で賑やかです。


「おーい、結里」

なんだか何度も聞こえてくるけど、一切合切無視。
一度決めたことは、曲げないのが女ってものよね。
だから、うんともすんとも返さない。

「なぁ、俺が悪かったって」

なのに、そう背中に当てられる声。
意外に、しぶとい。
初めて知った棗の一面。
然り気無く心の隅に覚えておこう。
そんなことを知るよしもない棗は先を続ける。

「結里のバームクーヘン、くっちまって」

その通り、棗が私の大事に取っておいたバームクーヘンを食べたのだ。
三日前に近所の行列の出来る、二時間は最低待ちのケーキ屋さんで買ったものを食べたのだっ。
今日一番の楽しみだったのに!!

「でもさー、」

まだ何か言い足らないことがあるらしい。
誠心誠意の謝罪の言葉かもしれない。
黙って聞いてみよう。

「結里が太らないようにって考えてる」

スッと素早く繰り出したパンチは棗に片手で易々と受け止められて、ポスッと情けない音を立てる。
ちっ、くそっ……。

「甘い」

ふっと鼻で棗が笑う。
とりあえず、今から私のすることは、この黒ずくめの居候やろーに一発当ててやることです。



やっぱ訂正。

私の家に小生意気で迷惑なヤツがやってきました。

おかげで、

家の中は煩いです。


一人じゃないからこそ、
(その煩さがある)


(あー、でも、我慢……無理!)






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