俺のsecret 「ごめん、シャトルー。シャトル取ってー」 部活の難波(ナンバ)がネットの向こう側から、俺に声をかけた。 了解ー、と俺側のコートの隅に落ちているシャトルを小走りで取りにいく。 そして、拾ったそれをネットの前で待っていた難波に手渡しした。 サンキュー、と笑顔。 誰しもお礼を言われて、嬉しくない人間などいないわけで。 俺もその枠から外れる例外などではなく、ちょっぴりほくほくとして自分の場所に戻ろうとしたとき、後ろから声が上がる。 「しっかしさー、シャトルって何でシャトルってあだ名がついたわけ?」 やっぱり、シャトルと悟の言い間違えからとか?と一人首を捻る難波を見て、俺は初めてそのあだ名がついたときのことを思い出した。 ― それは、そう。 小学一年生のときだった。 初めての小学校。 俺は、とても緊張していた。 前に立つ先生がいきなり、「周りの子とお話をしてみましょう」なんてクラスで言い出した。 俺の周りには同じ幼稚園の子さえ居なかったから、緊張でガチガチのカチンコチンで話せない。 周りが賑やかになる中、俺から半径85センチは静か。 俺だけそこから隔離されたようだった。 悲しくなったのと同時に、自分自身にやるせなさを感じていたそのとき。 「ねぇ」 それはまるで、天使だった。 ツインテールの天使。 「ねぇ、きいてる?」 「あっ、うん」 もう一度首を傾げて聞いてきた天使に、見とれてボーッとしていた俺は急いで返事をする。 ドキドキドキ。 何故か心臓が大きく動いている。 なんだろう、これ。 呼吸も苦しいし、熱いし、病気なんだろうか? 「なまえは?」 天使がまた尋ねた。 「い、いまいさとる」 「ショベル?いいなまえだね」 にこっと笑った天使。 思わずにっこりし返えそうになったが、ショベルはない。 ふるふると首を振って、もう一度言い直す。 「いまいしゃとる」 あ、噛んでしまった。 しかし、 「シャトルか!うん、なんかかお、シャトルっぽい」 あたしはいぬづかみさと腕を胸の前に組んでうんうんと頷いた天使は名乗った。 なんだかもう名前なんて、良かった。 もう一度俺を真っ直ぐ見て笑う天使、改め美砂に俺は夢中だったのである。 ― 懐かしいことを思い出してしまった。 思えば、あれが美砂との出会いで、一目惚れだった。 しかし、俺の存在は美砂にとって、取るに足らないものだったようだ。 名前すら覚えてないほど。 あ、なんか自分で言ったら悲しくなってきた。 ショベルと言ったら、思い出してくれるだろうか? いや、それはそれでなにか俺は負けてはいけない何かに負ける気がする。 「おーい、シャトル聞いてるー?」 難波が俺の顔の前で手を降った。 まぁ、これは俺に取って唯一美砂から貰ったものでもある。 だから、 「秘密」 そう言って俺は笑った。 せこい、せこくね?と言いながら、何度も難波は聞いてくる。 だけどやっぱり、譲れない。 絶対これは、俺だけの秘密で隠しておこう。 俺のsecret (例え、彼女は忘れていても) というわけで、シャトルとミサンガのお話でした。 この「シャトルとミサンガ」はいつしか私がmemoでお話したキャラクターを使ったものです。 ギャグというよりこれはコメディの原作を意識しましたら、センスもないのにちょこちょことギャグっぽい路線に走ったので、凄く中途半端に………。 すみませんっ。 いや、でも書くのはサラサラといけて、楽しかったです! ちなみに、難波は私のオリジナルです(笑)← |