永久契約


「なんだ、別に強くもねぇな」

政宗は敵と戦いながら、余裕でそう口にした。
事実雑魚ばかりだが、政宗と背中合わせにして戦うおれは、油断は禁物だとだけ返す。
戦場では、少しの油断が命取りとなる。
それも事実だ。
後ろは見ないが、基本刀同士の高い金属音が響き、時折ライフルが唸りを上げている。
いつもはないその音が、少し心地好く感じた。
「おし、この辺は終わったんじゃね?」
「だから、お前」
は油断し過ぎだ、と最後まで続かなかった。
後ろを向いたおれの前には、深紅が広がる。
政宗の腹から突き出るのは太陽の光を反射して、ギラリと鈍く光った。
…………なにがおこった?
思考は停止。
それを繰り返すのに、頭が考えるのを拒否する。
だからなにが…
ごぼっ、と政宗の口から赤い赤い血が吐き出されて、やっと理解を許可した。
「くそっ………!!」
政宗の後ろに回り、力任せに振った。
ごとり、と丸いものが転がったのを視界の隅で確認しながら、おれは崩れ落ちかけていた政宗を抱き止めた。



目の前には、青白い顔をした政宗。
一通り、手当てもした。
幸いにも、命に別状はなし。
あとは、目が覚めるのを待つのみ。
けれど、おれにはまるでもう二度と目が覚めないのではないかと思える。
この待つ時間は、ひどく長く、ひどくつらい。
これは…………おれへの罰なのか。
今日一緒に戦って、楽しいなんて思ったおれへの。
足手まといになるだけだと思っていたのに、背中合わせに戦うことが嬉しくて、浮かれていたおれへの。
いつも独りで戦うから、仲間と一緒に戦うことなんて忘れていた。
だから、いつもなら気付くはずの敵の殺気に気付かずに…………、
「ん……」
政宗の睫毛が震えた。
「あれ、俺………」
「政宗、もう来るな」
起き上がった政宗に、冷たく言い放つ。
政宗はパチリと大きく瞬きをして、
「いやだ」
と口にした。
起き上がって少し乱れた政宗の着衣から、見える包帯。
うっすらと、滲む赤。
手が知らない間に、震え出す。
膝の上でぎゅっと握りしめて、気付かない振りをする。
「もう、傷付くのは見たくない。誰かが死ぬのは、」
「俺は死なない」
凛とした声に、ハッと俯いた顔を上げた。
真剣な表情の政宗に捉えられる。
そして、政宗はもう一度言う。


「俺は絶対に死なない、お前より」


それに、と
「俺は一度決めた事は、絶対取り消ししねぇ」
政宗は、むーと眉間に皺を寄せながらこちらを睨む。
「人選を誤ったな」
おれは溜め息まじりに呟いた。
なにっ!?俺を選んで良かったって、今にも後悔させてやるっとこちらに殴りかかろうとして、いたたたと腹をおさえる政宗。
ハッ、やれるものならな、と俺は笑った。


なんだろうな、お前の言葉は信じてもいいと思えるんだ。




永久契約
(きっと、大丈夫だ)
 




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