曖昧Winner 「果たしてどう出るか、楽しみだぜ。フッフッフーン」 一筋の光さえ許さない闇夜に包まれる中、一人楽しげにそう呟いた。 「はい、どうぞ」 いつものように、マリベルは湯気の立つ温かいコーヒーをコトンとテーブルに置いた。 ん、とだけ軽く頷いて、ジャッカルはそれを手にとる。 それを口に運んで、少し満足気に口角が上げられた。 そこで、あ、と何か思い出したように、マリベルと声をかける。 何でしょうか?というようにジャッカルの方に顔を向け、首を傾げるマリベル。 「お前、おれのこと好きか?」 ジャッカルが紡いだ突然の言葉に、マリベルの目は点になる。 その様子を見たジャッカルは、ただ、 「いや、何でもない。気にするな」 とだけ言って、また新聞に目を戻した。 暫くして、慌ただしくマリベルが動き出す。 ほらな、言った通りじゃねぇか。 だから、奴との賭けはおれの勝ちだ。 ― 「フッフッフーン」 「……何しに来た?」 背後にいたその独特の口調を持つ人物にジャッカルは一際低い声を出す。 バックスはそんなジャッカルの様子は全く気にしていないように、軽い口調で言った。 「イヌ吉と遊びに」 「殺られたいのか、テメー」 ジャッカルはバックスの言葉を遮った。 「そんなに怒ると、血圧上がるぜ。フッフッフーン」 軽い態度が変わらないバックスに呆れて、ジャッカルは相手をするのをやめる。 「オイオイ、無視はダメだぜ。イヌ吉、賭けしねェか」 「賭け、だと?」 訝しげに、ジャッカルは復唱した。 バックスが持ちかけてきた賭けとは、おれがマリベルに自分のこと好きかと聞いて、゛好き゛と言ったら奴の勝ち、何も答えなかったらおれの勝ちというわけらしい。 「テメーの勝率低いぞ」 「フッフッフーン、どうかねェ?」 意味ありげに、バックスは笑う。 そして、もし負けたら、何か一つ言うことを聞いてやるぜと付け足した。 ジャッカルはその言葉を持って、賭けを受けることにしたのであった。 ― さて、マリベルは何も答えなかった。 奴には何をしてもらおうか……。 ジャッカルは新聞の文字など追わずに、そちらに意識を向けた。 曖昧Winner えと、その………ジャッカルさんのことは好きですが、それは敬愛であって、えーと、その、 マリベルは赤くなっていく顔に気付きながらも、必死に今はコーヒーを持ってきたお盆を片付けることだけに集中した。 |