変わらない地元仲間



いつもはがらんどうな道路も今夜は、賑やかな喧騒と色とりどりの明かりで溢れる。
そんな道路から外れた脇道で、しゃくしゃくと咀嚼する音が絶えず響く。
小さなその音は大きな道路であるならば、消えるはずなのに、ここではその存在を主張する。
最後、ずずーっと大きく吸い上げる音。

「祭りはさー、やっぱりこれじゃん!」

最後の一滴まで飲み干したかき氷のカップを高く持ち上げる田沼。
そんな田沼に苦笑を浮かべ、
「まぁな」
と同意を示しながらも清水は続ける。
「久しぶりに地元に集まった俺たち、今日は何があるでしょう?」
「まっつりー」
「大学が別々の俺たち、今何をしているでしょう?」
「かき氷食べてるー」
「じゃ、何の目的で来たでしょう?」
「えーと……かき氷食べるため?」
言葉も無しに、田沼の頭に向かって清水のチョップが振り落とされた。
「いったい!」
田沼は手にしたカップを取り落とす。
清水は頭を押さえながら座り込んで悶絶する田沼をバカにしたように見下ろした。
「ちげぇーだろ、俺らナンパしに来たんじゃねーのかよ?」
あ、と大きく口と目を開く田沼。
「あ、じゃねーよ。あ、じゃ」
間抜けな田沼の右頬を思いっきり右へと引っ張る。
いしゃいいしゃいと顔を歪めた田沼をしばらく見てから、ぱっと清水は手を離した。
少し赤みを増し、ヒリヒリとする頬をさすりながら、
「忘れてたんだよー」
と口にする。
ああん?と清水は唸り、
「ただでさえ、去年まで女子と縁がなかった男子校だったんだ。この機会を逃してたまるか!」
ぐっと手を握りしめた。
しかも、男子校出身と共学出身じゃあ、大学での女子との関わり方に大きな差があるんだバカ野郎などと呟く清水。
ガシガシとストローの先を噛みながら、それを見ていた田沼は他人事のように呟く。
「あついねー、清水」
「お前もあつくなりやがれ」
仕方ないなぁとくわえていたストローを手に持った田沼は立ち上がって腰に片手をあて、ビシッとストローを持った手を真っ直ぐ斜め横へと伸ばした。
どことなく、してやった顔だ。
「何……してんの?」
「え、あれあれ。えーと、ほら、ボーイズなんとかの」
「…………クラーク博士?」
「そうそれ!」
似てない?と嬉々とした顔で聞いてくる田沼に、言葉よりも先にため息が出てくる。
「まず、ストロー持ってねーし、お前指してんの壁だし」
どーせなら大通り指せよと笑うと、ま、間違えただけだしっと田沼はそっぽ向いた。
もう一度、そんな田沼を見て笑って、
「まぁ、折角久しぶりなんだし、バカやろうぜ」
清水は田沼の肩に手を回す。
なんだか田沼が珍しく納得のいかないような顔を浮かべた。
「えー、俺元々バカなんだけどー」
「そーゆー意味じゃねぇよ」
バカか、そう笑いながら久しぶりに会った二人は、また祭りの喧騒の中へと紛れていく。
それは、今年も去年と変わらない。



変わらない地元仲間(バカたち)
(やっぱ、いいもんだ)




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