長期休暇はゲームするためにある

―――目が覚めたら、ゲームの世界だった。




「いや何でェェ!?」

「お、やっと起きた。さぁ魔王を倒す旅に出ますぜ、ド変態踊り子」

「は?・・・・はああああ!?」




マントに魔導書、帽子を被った沖田は魔法使いのようだ。
ド変態踊り子と罵られた舞は自分の体を見下ろして固まる。

―――踊り子の衣装にしては際どすぎるのでは?下着より面積少ないよこれ?
さっと青褪める舞の唯一の救いは、下半身に申し訳程度の長い布があるぐらいだった。




「ちょっ・・・お、沖田さん!?これ一体どうなってるんですか!」

「Owee専用ゲーム、どらごんはんたー最新作・・・"どらごんはんたーW"でさァ」

「ど、どらごんはんたー・・・?」

「ゴーグルとグローブとブーツを装着してゲームに入ったかのようにプレイできる!今作からはネットに繋いで遠くのお友達ともプレイが可能!」

「弁天堂の回し者!?っていうか、私こんなのやった覚えないんですけど」

「安心して下せェ。アンタが寝てる間に俺が装着しておきました」

「屯所に泊まるんじゃなかったァァァ!!」




項垂れる舞に、総悟はニヤニヤと笑って上から下まで眺める。
意外といい体してんじゃねーか雌豚ァ・・・と言うものだから舞は容赦なく総悟を蹴り飛ばした。




「いてて・・・心配しなくても土方のヤローが起きるまでかわいがってやりまさァ」

「こんなときまでドS発動しなくていいです!ま、まさか副長も・・・」

「―――うるせェぞ、一体何の騒・・・ぎ・・・」




近くの地面に転がっていたらしい土方が起き上がる。
総悟はニヤリ、と笑って舞を土方に向けて突き飛ばす。




「わ、ちょっ・・・す、すみません副長・・・・・・へ」




ぽた、と胸元に血が落ちてきた。
恐る恐る顔を上げると、土方は白目を向いて倒れたあと・・・棺桶になった。




「副長ォォ!?」

「チッ、面白くねーリアクション。まぁいいや、舞さん、その馬鹿教会に連れてって下せェ」

「は!?いや、沖田さん?ゲームやめましょうよ」

「それが・・・やめたくてもやめられないんでさァ」

「・・・え」

「バグなのか壊れたのか分かりやせんが、ゲームが終了できないんでさァ。まぁ直るまで楽しみましょう」

「いや、ちょ・・・!」

「俺はその間に全員が装備買えるぐらいの金揃えとくんで、どっかで近藤さん拾ってきてくだせェ」

「ええええええええ!?」




ゲームが終わらない上に、いきなり使い物にならなくなった土方を押し付けられた。
せめてもの情けでさァ、とマントを投げつけられ、舞は恨みますよ沖田さんんん!!と叫ぶ。

いきなりカジノへと足を踏み入れる総悟を待とうと思ったが、戻ってくるのは当分後だろう。
涙目になりながらもマントを羽織り、棺桶に入った土方を引きずって教会へと向かった。




「・・・悪い。助かった」

「・・・いえ、お気になさらず・・・」

「とにかく近藤さんを探すか。いいか、お前は絶対そのマント脱ぐんじゃねぇぞ」

「脱ぎませんよ!!露出狂みたいになるじゃないですか!」

「総悟が金持って戻ってくると信じるしかねぇな・・・しかしどこ行ったんだあの人」




町を探しまわっていると、トシ!舞ちゃーん!と呼ぶ声が聞こえて振り返る。
軽装備に短剣という思っていたより普通の格好の近藤が近付いた瞬間、


"こ゛りら が あらわれた!"




「何でだァァ!!街中でエンカウントする上にアンタ敵なのか!」

「え、ええ!?いや、俺人間だけど!っていうか今気付いたけど名前ゴリラ!?また濁点一文字だし!」

「あ、あれ、私の名前"ト゛エム"なんですけど!?違いますからね!?」

「・・・俺はまたち○かすか・・・まぁいい、近藤さん、大人しく倒されてくれ」

「ちょっ、トシィィ!?待って!待って!俺以外にもまだ人が来るから!」




そう言った近藤が逃げる、コマンドを選択した瞬間。
後ろからやってきた何かに勢いよく吹き飛ばされ、土方と舞に僅かな経験値が入った。
痙攣して白目を剥く近藤を起こすと、土方は何やってんだ、と顔を引き攣らせる。




「・・・終、何だその格好」

「・・・」




アフロをターバンでぐるぐると巻いているせいか、すごくボリュームがあるように見える。
斉藤は持っていたナイフやターバンを指さし、自分は盗賊だとアピールした。
名前は"しまる"で至って普通の名前である。

似合ってますよ斉藤さん!と段々この状況に慣れてきた舞が駆け寄る。
走ったせいでマントの隙間から踊り子の過激な衣装と、近付いて来る"ト゛エム"の名前を見て斉藤は血を吐いてその場に倒れた。
また二人に僅かな経験値が入り、斉藤がダイイングメッセージでZZZ、と書いたところで土方はオイィィィ!!と叫ぶ。




「何でテメェまで死んでんだ!何そのメッセージ!?何の役にも立たないんだけど!・・・舞!もうお前はじっとしてろ!走るんじゃねぇ!」

「ご、ごめんなさい・・・!その、悪気はなかったんです・・・!」

「Z」

「何もう悔いはないみたいな顔しちゃってんの!?」




長期休暇はゲームをするためにある
(もう一回教会に戻るぞ。この二人死んじゃいねぇが虫の息だ)
(斉藤さん、立てますか?私肩貸しますから、)
(!!)
(もう血は吐かなくていい!)

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