理想の男性図に当てはまる男はこの世に存在しない

土方とパトカーで見回りをしていた舞は、ふとラジオから流れてきた声に耳を傾ける。

貴方の理想の異性は!?・・・というコーナーらしく、リスナーから理想の異性が送られてきているらしい。
くだらねぇなと煙草に火をつける土方に苦笑いしてまぁまぁ、と宥めた。




「大体女の理想っつーのはアテにならねぇんだよ。世の中にそんな男は存在しねぇ」

「そうですか?まあ大体かっこいい!優しい!とかですから、当てはまらなくはないと思いますけど・・・」

「大体3Kが基本じゃねぇのか」

「3K?」

「高身長・高学歴・高収入で3Kだ」

「ああ、なるほど。まぁ理想ですよね・・・・・・あれ、佐々木さん当てはまってますね」




途端に機嫌の悪くなったのを見て、ほんと仲悪いですね・・・と溜息をつく。
アイツは3Kじゃなくて3Eのエリート・エリート・エリートだろ!と訳の分からないことを言い出すものだから、舞は吹きそうになってしまった。
が、運転に支障があってはいけないので何とか堪えながら今度会ったら言ってやって下さい、と笑みを浮かべる。




『―――3Gも新しいですね!ギャップ、強引さ、ジェントル!』

「何だよジェントルって」

「これは副長が当てはまるんじゃないですか?」

「俺にギャップなんざねぇ」

「イケメンなのにほら、マヨネーズで損してるところとか!」

「いい度胸だ車降りろコラ」




土方に睨まれ、大人しく運転に意識を集中させる。
ラジオを消して車内が静かになると、土方はお前の理想は何だ?と尋ねてきた。
聞かれるとは思っていなかった舞はえ、と急いで考える。




「・・・うーん・・・3なんとか、って感じにはならないかもしれません」

「何でもいいから言え!」

「な、何で怒ってるんですか!」

「・・・」

「う・・・えっと、優しい・強い・愛してくれる、ですかね・・・」

「・・・」

「い、言えって言ったの副長じゃないですか!無言になるのやめてください!」




恥ずかしそうにハンドルを握り直す舞に、土方が突然笑い出す。
そんな変な条件じゃないですよ、とむすっとした顔になったのを見て悪い、と謝ると窓を少し開けて煙を吐いた。




「・・・それなら俺も当てはまるか?」

「・・・そ、そうですね」

「・・・そうか」

「(何この雰囲気!?)」




ドキドキするのは気のせいだ、と自分に言い聞かせる。
屯所が見えてくると、俺の条件も楽だぜ、と突然強気な笑みを向けられた。
横目でちらりと見て何ですか、と棒読みで尋ねると、




「・・・お前だ」

「は、い!?」

「馬鹿ッ、前ちゃんと見ろ!」

「す、すみません・・・」

「ったく、そこまで動揺されるとこっちが恥ずかしいじゃねーか・・・」




赤らんだ顔を手で覆い隠しているのが見えて、舞は吹き出す。

自分で言ったんじゃないですか。・・・うるせぇ。
そんな問答を続けている内に屯所に着き、パトカーから降りた土方はなぁ、と話を切り出す。
今度は何を言われるのかと身構えていると、土方はそんなに畏まるな、と顔を赤らめる。




「は、はい!」

「・・・今度デートでもするか」

「へ・・・ど、どうしたんですか副長!今日変ですよ!」

「うるせぇ、言わねぇだけでいつもこんなんだよ俺は」

「嘘言わないで下さい!」

「で、返事は?」

「え、っと・・・・・・その、まあ、休みが合えば、お願いします」




おう、と頭を撫でられて舞は顔を俯かせる。
どこか上機嫌で先に戻る土方を恨めしげに見て、優しい、強い、愛してくれるの自分の条件を思い出す。
・・・いや、確かに副長には当てはまるかもしれないけど、愛してくれてる?え?あれ?

思わずハンドルに突っ伏すような形になると、夜中だというのにクラクションが鳴り響いて舞はダッシュで戻ってきた土方にお叱りを受けたのだった。




理想の男性図に当てはまる男はこの世に存在しない
(マヨラーはNG、って言ったらどんな反応するんだろう・・・)

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