キリボス
「なーあー!構えよ加藤ーー!」
「…っ静かにできないのかアンタは!」
全く、この人は本当に年上なのだろうか。身長的には確かに俺のほうが断然高い。しかしどうみてもこの人は幼稚さが目立つ。頭のキレる賢い人間なのに、どうもこう悪いところばかりが目立つ。いや、それが魅力なのかもしれない。そういう面があってこそ、俺が惚れた藤崎佑助なのだ。
「今は仕事中だ」
「そんなもん後でだってできるだろ」
「アンタに構うのも後でだってできる」
ケチ!と背後でブーイングの嵐。でもこんなやりとりがちょっとだけ嬉しかったりする。藤崎には内緒だが、わざと無視をしたりするのも反応を楽しむためだ。
「くそっ、見てろよ…」
何か考えがあるらしい。いつもの事ながら楽しそうな奴だ。たぶん、1番楽しく生きてるのはこいつ意外に世の中いないんじゃないかと思うくらい、周りには笑顔が絶えない。そしてその周りに俺も入っているわけで。
藤崎が声をかけるのを待っていると、トントンと肩に手をかけるのを感じて振り返った。
「キリくん、似合う?」
「な、なにやってるんだ…」
「え、頭にリボンつけただけじゃない。キリくん照れちゃってかわい〜」
振り返った先にはどこから取り出したのか、ピンク色のリボンを頭につけた藤崎が立っていた。ただ単につけた、と思えばよかったのかもしれない。だが思考に反してかわいいと思ってしまう自分は恐らく重症だ。
「しょーがねぇな、構ってやるよ」
「そうこなくっちゃ!…ってあれ」
俺はニコニコとしていた藤崎をひょいと抱き上げた。
「ちょっ…加藤!?なんで持ち上げてんの!?」
「人目のつかないとこ、行くんだろ?」
「ばっ…そんなこと言ってねーよっ!!」
おろせおろせという叫びが聞こえたが、聞こえないふり。反応を楽しむには無視が1番いいってことは自分がよくわかってる。この状況を楽しまないと、藤崎の近くにいる意味なんてねーからな?
(だ…だからおろせってばあーー!!)
---------------------------
キリボスは構ってちゃん藤崎とスルー希里くんが1番です。