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椿藤
なんか、意外だな。
そう思いながらティーカップを口元に運ぶ。ふわり、とシナモンの香りが鼻をくすぐる。甘い香りだ。一口飲むと独特な深い甘みが広がって…、やっぱりオレから見たら意外だったんだ。
「ん、うまいよ」
「そうか、よかった」
短い会話をかわし、目の前の片割れは静かに茶をすすった。
「けど、お前が甘いもの好きだとは思わなかったぜ」
片割れーー椿の家に招待され、まず出されたのがシナモンティーだった。お子様舌などと呼ばれる自分も大概だが、コーヒーくらいは飲む。てっきりカチカチ頭の椿は年齢離れしたものを好むのかと思いきや、甘いものも好きらしい。シナモンをチョイスしているところも珍しい感じがする。
「シナモンティーはお気に入りなんだ」
「へぇー、イメージと合わないな」
「別にボクが何を飲んでもいいだろう」
そう言ってまた一口すすった。
別にそんな言い方しなくてもよ、と自分もブツブツ言いながらカップを運ぶ。何度口にしても飽きない、上品な味。オレには似合わねーや、なんて思うけど。
「キミももう少しボクに対して甘い態度をとってくれてもいいのにな」
はいはい、そうだな…ってええ!?今こいつ何て言ったんだ?思わず顔をあげると、椿は澄まし顔で茶を飲んでいる。これはスルーすべき発言ではない。
「どういう意味だよ」
「別に何も。お茶がおいしいと言っただけだ」
「ぜってー嘘だろ!なんかムカつく!」
そのままオレは席を立ち上がって、椿に近づいて行った。こうなったら意地でも意味を吐いてもらおうと、くすぐるために脇腹に手を伸ばす。
しかしその伸ばした手を逆に椿に引かれ、前のめりになる。うわっ…なんて声を出す前にその口は椿のそれによって塞がれていた。
「意味はわかったか、藤崎?」
目を合わせるとドヤ顔のあいつがそこにいて、やられた、なんて思う前にちょっと嬉しかった自分は、きっと相手が思ってるより全然甘かったことに気づいた。
「やっぱり、意味わかんねーよ」
自分の顔が赤いのを感じながら、仕返しをするようにもう一度椿と唇を重ねる。重ねた瞬間、シナモンの香りが引き合わせたんじゃないかって、そんな気がした。
(言っとくけど、椿限定だからな)
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一応恋人設定です。またボッスンがツンデレに…意識してないのになあ。
実はこれ、ボツになったネタのリメイク版。小物がちょっと難しかったですね。
こちらを読めば小物云々の話がわかります。