とんでもない。


とりあえず、いそいで冷蔵庫の残り物で食べられそうなものを持ってきてみた。

男の人ってどれだけ食べるかわからないからとりあえずたくさん。

食材ほとんどなくなっちゃったけどまぁ、いいや。


「……悪いな…助かったぜ」

沢山持ってきたはずの食材は、まるで吸い込まれていったかのようにあっというまに無くなってしまった。

なんととんでもない食欲だろう。

「いや…いいんですよ!死にかけの人ほおっておくほうがどうにかしてますし」
「そうか…。ホントにやばかったぜ…電気もガスもとめられて最後の水道までとめられてよ…」

水道とめられるとか…いったいどれだけ貧乏なのだろうかこの人は

「平気なんですか」

「そんなわけねぇ。でも、服とか食費に金つかうより楽器やバンド活動にまわしてるな」

「へぇ…」

たしかに、服装は綺麗とは言えないし部屋も生活感がまるでないけど。

よっぽど好きなんだな。

「でも…隣の部屋に人がいたとはびっくりだな。引っ越してきてもすぐいなくなるし…最近では誰も住まなくなったからなぁ。ま、理由は明確だけどな」


「そうなんですかー。私は好きですけどね?」

私がそういうと、彼は驚いた顔でこちらを見る。

「そうか。お前なかなかいいやつだな」

「そ、そうですか?」

「あぁ。今日はホント助かったぜ…いつか恩はかえすからな」

「!いえ、いいんですよ!」


どうやら、隣の人はいい人で、なんか仲良くやれそうな感じだった。


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