妖しい笑み



「助けてよ!音也くん。トキヤが怖い!」
「えぇー」

あれからというもの、私は色々な意味でトキヤのことが怖くなってしまった。
本当にトキヤは怖い。

キツイだとか厳しいとかそういうんじゃない。

トキヤは真顔でサラッとへんなことを言うんだ。

ちょっと前のミニスカートの話もそうだけど…。
このままいくと色々危ないんじゃないかと身の危険を感じる…!

「大丈夫だよ、更紗。この学校、恋愛禁止なんだからさ。そんないきなりとって喰われたりなんかしないって」
「でも…」

「あぁ…更紗!こんなところにいた」

「!」

なんて話をしていたら本人登場。
急いで走ってきたのか、息を切らしていた。

「でた!」
「?何がですか?」
「いや、なんでもない。」

どうやら、本人は私があんなことを考えてるとはわかってないらしい。
無自覚か。

よけい怖い!

「今日は曲の練習をする約束をしていたでしょう?いったい何をしていたんです」
「あ、ごめん。忘れてた!」
「しっかりしてください。次からは気をつけてくださいよ?」
「…はい」

・・・そうだ。
ごたごた言っていても、私はパートナーだ。
迷惑はかけちゃいけないよね。

「あ、音也くん。ありがとう。またね!」
「うん!」

私は音也くんにバイバイしてトキヤとレコーディングルームに向かった。






*・*・*

「さて。今日はこの位にしておきましょう」
「そうだね。お疲れ様でした」

今日の練習はこれで終わりだ。
長かった。

そしてトキヤは…相変わらず歌は完璧なんだよね。

惚れ惚れするくらい

「なんですか?そんなにじろじろ見て。」
「別に。じゃぁ、私帰るから。またあしたね!」

ひらひらと手をふり足早に帰ろうとすると…

「おっ!?」

何かを踏んづけ、視界が揺らぐ。

やばい、倒れる…

「危ない!」

と思ったら、たくましい腕に抱きかかえられた。

「!!!」
「…本当にドジですね。あなたは」

ん?トキヤ…

って顔近い!
近い!

「?…どうしました?顔が真っ赤ですよ」
「っ…顔近い!離れて!」

そうじたばたしてみたけど、トキヤははなしてくれなかった。
むしろ、なんか楽しそう?

「…トキヤ?」
「…なんでしょう。なんだか変な感じです。」

そういって私の顔をじーと見つめてきた。

「な…なにが?」
「密室で二人きり。そして、この体制…」

そうぶつぶつ言いながら微かに微笑んで…

「なんだか、興奮しますね?」
「!?!?」

なんだって?!

「しないしない!なんかごめんなさい!」

私はとりあえず、むりやりトキヤを押しのけてその場から逃げ出した。










その後。

「・・・ホントに。からかいがいのある人ですね」

トキヤが、逃げる彼女の背中を見つめ、そう楽しそうに呟いたことを彼女は知らない。



(興奮しますね、もちろんそういう意味で)

2011:1230




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