それが丁度いい
今日、たまたま立ち寄った図書館で見かけた光景。
「名前ちゃん」
「あ、那月くん」
「どうしたんですか?」
「うん…取りたい本があるんだけど…。あの一番上の。でも、高すぎて届かなくて。」
「これですか?」
「わぁ、ありがとう!」
たったそれだけのことだった。
でも、なんだか少し妬けた。
俺ももう少し背が高ければよかったのにって。
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「あ、翔ちゃん?」
「…あぁ。名前か」
そんなことを考えながら歩いていたら、丁度名前に声をかけられた。
タイミング悪いな。
今あんまり機嫌良くないのに。
「ねえ翔ちゃん」
「なんだよ」
「…なんか怒ってるの?機嫌悪い?」
「別に。考えごとしてただけだよ」
「何考えてたの?」
「大したことじゃねえよ」
そう言って適当にあしらうと、名前は不機嫌そうに頬をふくらませた。
「私に隠し事するの?」
「……」
あんまり悲しそうな顔をするものだから、仕方なくわかったよ…というとぱぁっと明るい顔になった。
その顔は反則だと思う。
「背がな…もう少し高かったらよかったのにと思っただけだよ…」
「背?」
「そうだよ」
そういうと、名前は何で?と不思議そうに首を傾げた
「だって。チビとか言われたくないし…。背が高い方が得だろ?」
「そう?私は可愛い翔ちゃんすきだけどな」
「可愛いいうなっ」
名前は嬉しそうに腕に抱きついてくる。
「背低くても得はあるよ。例えば…ずっと顔を見てはなしてても首が痛くならない!」
「…なんだよそれ」
「あ!あとね、これは重要だよ!」
そして、腕を引っ張り顔を近づけてきた。
そして、小さなリップ音と唇に柔らかな感触。
「!!」
「目線が近いからキスがしやすいんだよ」
「な…何するんだよいきなり」
「嫌だった?」
「…別に…いやじゃないけど」
だから、背なんか高くなくてもいいんだよと名前は嬉しそうに微笑んだ。
お前には勝てる気がしねえな
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