「よく、自分がされたことを人にしますよね。イジメの現場でも……イジメられたことのある人がイジメをするように、僕も人に無の感情を与えられたので、無の感情を返すようになった。……ただ、それだけのことです」


   黒子は淡々と理由を述べた。それを悲しげな表情で聞く緑間は今、一体誰の心に同情しているのだろうか。

   本心を伝えなければ、良かった。ここはもう、居心地が悪い。視線の行き場がなくて、黒子は既に飲み干してしまったバニラシェイクのカップをひたすら見つめる。無言になった緑間の反応を、黒子は息苦しい思いをしながら待っていた。出来るなら帰りたい、だけど、好き勝手に帰れる雰囲気でもない。あの賑やかで多弁な高尾さえも、嫌に静かだ。どうしよう、だから面倒くさい、人間は。別に、どうだっていいじゃないか。僕の無関心で誰が傷つくというのだろうか。そうして、黒子の苛立ちがピークに達した時、

   ガタリ、立ち上がったのは緑間だった。カバンを肩にかけ、トレイを持つ。慌てて高尾も同様の動作をとったが、緑間と違って黒子を気遣わし気に見ている。黒子としては好都合。これ以上煩わしい問いかけはごめんだった。黄瀬とは違って一線を引いてくれるから、緑間は幾分扱いやすかった。黒子は安堵の溜息をひとつ漏らす。

   もしかして、先日黄瀬が訊ねた質問の意図も緑間と同じなのだろうか。それを訊いて一体どうするのだろう。全く意味が分からない。やはり理解からは程遠い人達だな、黒子が過去の記憶を思い出しながら辟易した時、緑間は眉間に皺を寄せながら去り際に一言。


「黒子……無で傷ついたお前が無でいることで……知らぬ間に誰かもお前のようにひどく傷ついているのだよ」










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