「黒子……お前には好きな人間はいるのか?」


   珍しく、マジバに居合わせた緑間と彼の相棒・高尾。今日は生憎火神は先に帰ってしまった。2対1の詰問、分が悪い。

「それを訊いて、どうするんですか?」
「質問に質問で返すのは、よくないのだよ」

   ふと、あの人も言いそうな言葉だと思いながら、

「別に……いません、誰も」

好きとか嫌いとか考えるのが馬鹿らしくて。ポツリと本音をこぼせば、これまで黙って様子を見ていた高尾は淀んだ空気を払拭するようにブハッと笑った。

「真ちゃ〜ん! 残念だったね! テッちゃんは真ちゃんのこと、何とも思ってないってさ! 失恋、ドンマイッ!!」

   彼は、どうやら敵ではないらしい。面白い不敵な中立者だ。

「ば、馬鹿者! ふざけるな高尾! 俺が黒子を好きなわけじゃなくて、黒子をずっと好きなのはあ……っ、いや…………何でもないのだよ」

   取り乱してズレてしまったメガネを直しながら、冷静さを持ち直した緑間。黒子は緑間が言いかけた言葉が気になったが、おそらく教えてくれないだろうと判断し口を噤んだ。飲みかけのバニラシェイクを口に含んで喉を潤す。そうして、一息ついて、黒子の独白は始まった。









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