5.


   やっと、みつけた


   それが黒子テツヤに出逢った時の、俺の心の声だった。父親からのプレッシャーはあれど裕福な家庭でなに不自由なく生活し、教師からは信頼され友人にも恵まれ、勉学・スポーツ・将棋もチェスも、全てのことに勝利してきた赤司征十郎。傍から見れば、足りないものなど特に見当たらないのかもしれない。自分だって、そうだと思いたかったのに。

   心のどこかで常に何かを探していて、ずっとずっと見つけられなかった。あの子に出逢う一秒前までは。


『……赤司君は、凄いです……こんなボクを、こんなボクの可能性を見出してくれて……キミが黒子テツヤを見つけてくれて、とっても嬉しかったんです』


   そうして、さがしもの、みつけてからというもの。

   風景に見え隠れする透明なあの子を見つける度に、勝利に雁字搦めにされた心のこわばりがふわりとほどける。こちらの視線に気付いたあの子がふわりと笑えば、臨機応変に表情を作っていた自分さえ自然に笑えてしまうから不思議だ。もっともっと、ふわりふわりと、やさしくなる気持ちを感じながら、あの子の名前を大切に呼ぶ。


「……黒子君」


   たったそれだけで、俺は幸せだったんだ。



あっ、あの子を、みーつけた/さがしものは、きっと、たからもの









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