3.


   自分の生活の中に、透明なあの子が住んでいる


   朝、体育館の窓から見えるのは、寝ぼけ眼の薄い水色の空。あの子に先を越されたけれど、見つけたのは俺の方が先。

「あっ……お、おはようございます、赤司君」
「やぁ、おはよう黒子君……早いね、ビックリしたよ……俺が一番かと思ったけど」
「え、あっ、す、すみません!」
「えっ?なにが、すみませんなの?」
「あ、あの……赤司君は、誰よりも一番が似合うのに……ボクなんかが、朝練の集合順、一番をとってしまって……すみません」
「……。ふはっ、」
「……な、なんで笑って、」
「あ……いや、すまない。黒子君の焦り様が可笑しくてつい……ふふふっ」
「う……」


   昼、ふんわり微笑む柔らかな黄色の日差しが、カーテンから漏れ出して。図書館にて真剣に本のページばかり見つめるあの子、気づいて欲しくて、小さく肩を叩いた。

「……?……あっ!か、しく、」
「シッ……」
「……ぁ、すみません……物語の途中で急に赤司君が現れて驚いてしまいました」
「読書中にすまないね……黒子君があまりにも本に没頭して、こちらに見向きもしなかったから……つい、邪魔したくなったんだ」
「……えっ……?」
「……黒子君も、読書が好きなの?」
「……ぇ、は、はい……す、好きです」
「そう……気が合うね」
「……は、い……」


夕、欠伸をしながら西方へ倒れこんでいくのは橙色の太陽。限界を知りたくないガムシャラさ、その真っ直ぐさが好きだけれど、心配で放っておけない。

「黒子君、そろそろ自主練を切り上げたらどうだい?もう外は真っ暗だよ?」
「ハァ、ハァ……赤司君、もしかして、ボクはキミを待たせてしまっていましたか?」
「……汗だくフラフラのまま体育館で倒れて放置されたら、風邪を引いてしまうだろう?」
「……すみません。赤司君だって疲れているのに、余計な心配をかけてしまって……」
「心配するのは、俺の勝手だから……謝らなくていいんだよ」
「……優しいんですね、赤司君」
「……いや、そんなことないよ。……ほら、お家に帰ろう」
「……はい」


   朝も昼も夕も、透明な彼がそこにいるだけで、カラフルな絵の具が滲み出てくる。これまで気付かなかった、自分を取り囲む世界の心の色。決められた人生のレールから飛び出して、自分の意志で手を伸ばしたこの子がそばにいると、俺はちゃんと生きている感覚を知り得ることが出来た。


「はい、ドリンクとタオル……ちゃんと水分をとって、汗をふいて」
「……ありがとうございます。……なんだかボク、赤司君にお世話になりっぱなしですね」
「いや……俺が好きでやってることだから、気にしないで」
「……赤司君は、やっぱり優しい人です」
「……黒子君くらいだよ、そんなことを言うのは」



あの子と過ごせば色づいた / 無色なカラフル、キミの魔法









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