2.


   無色透明、あの子とボールは、夢のように消えてしまう


   バシリッ、簡素な音と強烈な衝撃で感知する、あの子の凄さ。知らぬ間に手のひらに存在している、そのボール。

   期待以上、あの子はやっぱり、ダイヤの原石だった。勝てども勝てども何かが足りない。目に見えぬ不安要素を抱えた百戦百勝をスローガンとするバスケの名門・帝光中学。俺達が勝利を確実のものとする為に、必要だったトリッキーな存在が、今ここにいる。俺が探し求めていたシックスマン、それになる可能性を秘めた影の子。

   あの出逢いの日から、待って待って待ち続ける日々が、もどかしかった。誰かをわざわざ待つなんて、俺らしくない。そもそも、心の底から誰かを助けたいだなんて、なまやさしい気持ちが生まれたこと自体、赤司征十郎の人生の中で初めてだ。周囲から温厚と言われていたのは、人間関係を円滑に進める為だけに使っていた上辺だけの優しさにみんな騙されていたからで。俺がしたのは、あの子が新たな希望を見つけるように、糸を垂らしただけ。それでも、指と指を結んだ細く脆い繋がりには、偽りのない強い想いが流れていた。

“絶対にキミは絶望に屈しない、希望を手にしてオレの元まで這い上がってくる絶対に”

   あれから数ヶ月後、バスケを続ける覚悟を胸に、見つけ出した新しい武器を手に、俺の元へ再びやって来たあの子。コート上から空気に馴染むように姿を消して、自分の手から仲間の手へとボールを繋いでいく鮮やかなパス。キレイだな、あの子が紡ぐ消失した線は、俺の瞳だけがハッキリと捉えていた。



消えちゃうあの子を見ているの / 今も未来も全てのことを









×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -