1.


   あの子は、いったい、なにもの?


「キミに興味がある」


   人生で初めて、人に対して湧いた興味は後にも先にも、あの子だけだった。明確な理由なんて、俺は知らない。はじめてのことに、ただひたすら驚いて、衝撃で頭は真っ白。ふたつの瞳は、この子のことしか見つめない。直感・本能、理屈じゃない何かによって、心が引き寄せられたことしか、俺には分からなかった。

   あの子は言う、「ボクには、バスケの才能がありません」と、力なく諦めを口にする。大好きなバスケを手放そうとしていたあの子、シャボン玉のように今にも消えてしまいそうで。俺は親しい友人でも何でもないのに、何がなんでも、助けたいと思ったんだ。

   ふたりきりの第四体育館、改めて向き合って、この子をよく観察すると、ふたつの対照的な特徴に気付く。印象に残らないボンヤリとした立ち姿と自分を見つめる真っ直ぐな瞳。生まれ持った影の薄さと内に秘めた意志の強さ。それ以外はよくわからない、バスケをする上での特性が見えない。しかし、他に類を見ないこの子にはきっと、未知の可能性が詰まっている。ひとりで宝物でも掘り当てた気分になった俺は、ひとつのアドバイスをして去った。新たな自分を見つけたあの子と再会出来る日を、心の底から楽しみにして。


「キミの答えを待ってるよ」

 
   それが、不思議なあの子との出逢い。俺とあの子、まだふたりだった頃の、物語のはじまりだった。



あの子はだあれ? / いつかの僕の運命の人









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